しかしながら現状の不安定さに追い打ちをかけているのは、アメリカ政府とイラン政府の間に信頼関係が根本的に欠けていることだ。かつて歴史的快挙とたたえられたイラン核合意という外交的打開策に代わって、合意に対する両国政府の強硬派の懐疑的な見方が優勢になった。

オバマ・トランプ両政権の米国家安全保障会議(NSC)核不拡散担当官で、現在はNPOのシンクタンクである核脅威イニシアチブ副代表代理のエリック・ブルーワーは、トランプ政権がイラン核合意から離脱した当時、イランは合意を遵守していたと指摘する。「アメリカの合意離脱を受けて、イラン政府が核開発を拡大したのは当然だ」

「バイデン大統領は合意復活に努めたが、結局駄目だった。その結果、今ではイランと何らかの合意に達することははるかに難しくなっている」とブルーワーは本誌に語った。「イランの核開発計画は後戻りできないレベルまで技術的進展を遂げている。地政学的環境、および欧米とロシア・中国との関係も15年に比べてはるかに厄介になっている」

ブルーワーはお手上げというわけではないとしながらも「合意の見込みは薄く、どんな合意なら可能で、そのためにはどうすればいいのかについて、枠にとらわれずに考える必要がある」と語った。

一方、中東ではより不確実性さを増す国際的秩序を背景に、ガザでの戦争によって不安定さが増している。

「イランが明日にも核保有国になろうとしているわけではないとしても、核政策の転換を示唆する発言は気がかりだ」とブルーワーは言う。「イランの核能力がかつてないほど向上し、ガザの紛争がイラン政府に核開発拡大もしくは核保有を決意させる方向に展開しかねないだけに、なおさらだ」

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