ではグローバルなテロとの戦いを誰が率いるのか。軍事的には、今でもアメリカは世界最強の部隊を対テロ戦争に送り出せる。19年には当時のISの指導者アブ・バクル・アル・バグダディを殺害。その後ISの指導者は顔も名前も表に出さない影の存在となったが、シリアで展開された米軍主導のIS撲滅作戦「生来の決意作戦」はその後も成果を上げてきたし、今も上げ続けている。

だが、その成果も限定的と言わざるを得ない。モスクワ近郊で起きたテロ後にISのアンサリ報道官が豪語したように、ISとその系列組織は世界各地に散らばり、影響力を広げ続けているからだ。

アフリカでは、ISと戦う地元の軍閥や自警団をロシアが支援。特にアメリカ、フランスなど西側の駐留軍が住民の反感を買っている国で影響力を広げようとしている。反政府勢力をつぶし、ISなどのテロ組織との戦いを支援することで、マリやブルキナファソなどの政権にテコ入れし、その見返りに自国の権益を拡大する──中ロは今、こうした試みに前のめりになっているようだ。

ロシアで起きたテロが示したのは、大国間の競争激化でテロ組織が活動しやすい状況が生まれ、イスラム過激派のテロが再び世界中で猛威を振るうリスクが高まっていることだ。

「ある人にとってのテロリストは、別の人にとっての自由の戦士だ」とはよく言われる言葉だが、その真偽は議論の余地がある。イスラム過激派のテロ組織はこの言葉を「勝利の方程式」として利用し、脅威と見なされる立場を脱して、国家と堂々と渡り合える存在になろうとしている。

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