答えの1つは間違いなく「経路依存性」だろう。
過去の経緯や歴史に縛られてしまうことだ。企業はある分野でノウハウを身に付けると、往々にして新たな分野に移るより今の分野で技能を磨くほうが収益性が高いと見なす。
しかし、おそらく心理的な要因も関係している。
日本のトップ企業、ひいては日本社会全体が、エンジニアリングの技術に強い誇りを抱くあまり、まさにその能力が価値を失いつつあるという現実を受け入れ難かったのだ。
日本の成長を導いたことを神業のように評価された通産省(経済産業省の前身)をはじめ、官僚たちも同じだった。
メーカーも国の指導層も、得意の技術力が価値を失ったことを認めることができず、自ら経済的な凋落を選んだと言ってもいいだろう。
日本の経験から2つの重要な教訓を学ぶことができる。
第1に、国はどれだけ経済的な成功を収めようとも、新しい発想や技術や状況に適応する姿勢を取らなければならない。
第2に、「相対的衰退」はどれだけうまく対処しようとも、国際的な影響力の喪失につながる。
高齢化に加えて新興の技術に弱いヨーロッパは、肝に銘じるべきだ。
ダニエル・グローDANIEL GROS
ドイツ出身の経済学者。IMFのアドバイザーなどを経て、現在はシンクタンク欧州政策研究センター研究部長。主な研究テーマはEUの経済政策で、欧州議会への助言も行う。
2026年4月21号(4月14日発売)は「台湾有事の新シナリオ」特集。
米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由
※バックナンバーが読み放題となる 定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます