これが意味することは明らかだ。ハマスが打倒された後、残された空白を埋めることができるパレスチナの政治勢力が現れなければ、イスラエルは新たな地獄を見ることになるだろう。

パレスチナで分断と混乱が続けば、戦闘終結後に安定した和平が訪れる可能性はさらに低くなる。PLO主流派であるファタハは交渉による紛争解決を目指しているが、これも一筋縄ではいかないだろう。紛争後の新生パレスチナ自治政府がガザを統治するには、人気が高まっているハマスの承認を得ることが必要だ。

その承認のためには、PLOが求める「政治的」な妥協とハマスが求める「歴史的」な権利の擦り合わせを要する。だが、かつてPLOがイスラエルとの間に締結したオスロ合意をハマスが承認することはあり得ない。合意で求められた2大条件はイスラエルの承認と、「占領者」であるイスラエルへの武力抵抗の放棄だが、これらを認めればハマスの存在意義が損なわれる。

PLOがハマスを政治のプロセスに取り込めない限り、紛争後のガザにまっとうなパレスチナ自治政府を確立することは不可能であり、パレスチナ国家の樹立は夢のまた夢だろう。これはイスラエル側にとってもパレスチナ側にも厄介な事態だ。しかし、ネタニヤフとその連立相手である極右一派にとってだけは好都合だろう。

©Project Syndicate

240220p15_Shlomo_Ben_Ami.jpgシュロモ・ベンアミ

SHLOMO BEN-AMI

イスラエル元外相。世界各地の紛争解決を目指す「トレド国際平和センター」副所長。著書に『戦争の痕、平和の傷──イスラエルとアラブの悲劇』がある。
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