米政府が感じた居心地の悪さ

流れが変わったのは10月17日の晩だ。午後6時59分、ガザ市にあるアル・アハリ病院の駐車場で爆発が起きた。

パレスチナ側は直ちに民間人471人が「イスラエルからの攻撃」で死亡したと発表。全世界のメディアがこの数字を報じた。

その後、実はハマスと共闘する「イスラム聖戦」の発射したロケット弾が誤って落ちた結果だという分析が示された。

死者数についても、アメリカ側はせいぜい30人程度だと推定している。

それで各国のメディアも誤報として訂正を出したが、それでもなお、多くの死者を出したこの残虐な攻撃の責任はイスラエルにあるという印象は消えなかった。

アメリカ政府は一貫して、民間人の犠牲を最小限に抑えることを最優先にするよう、イスラエル側に求めていた。

だが個々の標的については、両国間で見解の相違はほとんどなかったという。

複数の当局者によれば、バイデン政権がもっと懸念していたのは軍事作戦の「姿勢」だ。

政権内部の協議に参加した前出の米空軍幹部によれば「バイデン政権はハマス殲滅という目標を支持しているが、イスラエルのやり方には居心地の悪さを感じていた」。

11月に入ってイスラエル軍の地上侵攻が本格化すると、これではガザ住民への「集合的懲罰」だという非難が各方面から上がった。

むろん、イスラエル側は反論した。

ガザ地区北部の住民には南部に退避するよう警告していた、ビラの投下やSNSでの警告、電話やメールでの退避勧告も行っていたと主張した。

パレスチナ側が発表している民間人の死者数については、イスラエルだけではなくアメリカ政府も疑念を抱いているようだ。

バイデンは10月25日、「パレスチナ側が犠牲者数について真実を述べているかどうかは分からない」と発言した。

その翌日には国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調査官が、ホワイトハウスは「テロ組織の運営する組織が発表した数字」は使わないと述べている。

だが複数の情報筋によれば、本音の部分ではアメリカの情報機関も、パレスチナ民間人の死傷者数はパレスチナ保健省の主張する数字とほぼ一致しているとみている。

前出の米空軍幹部によれば、「空爆の規模や戦闘員と民間人が混在している事実、それに人口密度を考慮すれば、特に驚くべき数字ではない」。

これはイスラエル側も認めているところだが、米政府はイスラエルに、今回の戦争遂行に関して3つの質問を投げかけている。

①ハマスの作戦能力を破壊するという長期目標の達成に民間インフラ(ハマス幹部の住居を含む)を爆撃する必要があるのか、

②重量2000ポンド(約907キロ)の爆弾を多用する必要があるのか、もっと爆発力の弱い爆弾なら民間人の犠牲を減らせるのではないか、

③そもそも「ハマス殲滅」という目標は妥当なのか、の3つだ。

民間人死者の7割は女性と子供
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