民主主義諸国はYouTubeやフェイスブックに代表されるSNSに対する監督・監視を強化すべきだ。さもないと国内外の専制主義者に乗っ取られ、悪用されてしまう。

諸悪の元凶は、アルゴリズムで拡散するスキャンダルから生じる利益に群がるSNS運営会社の体質だ。嘘でもいいからショッキングなクリックベイト(ユーザーの衝動的なクリックを誘う餌(ベイト)としての画像や見出し)を掲げ、餌に食い付いたユーザーをできるだけ長く自社サイトにとどまらせ、その間に集めた情報で的を絞った広告を送り付ける。こんなビジネスモデルがある限り、「餌」はどんどん過激になり、嘘が増え、結果として民主主義への信頼が損なわれる。

しかも、そこに中国共産党が目を付けた。その宣伝工作機関は巨大で、SNSもAI(人工知能)も巧みに使いこなす。そして経験を重ねて腕を磨き、世界中で暗躍している。今回のように私たちの無知や偏見に付け込み、利用するすべも心得ている。この陰湿な宣伝工作に対抗するのは、たぶんウラジーミル・プーチンの率いるロシア軍を撃退するより難しい。

学者の信用も低下しているようだ。どこのメディアもクリックベイトに食い付き、それを無邪気に拡散させるだけで、チベット文化に詳しい専門家や人類学者の見解を聞こうとしなかった。

いや、人類学者が自ら身を引いてしまったのかもしれない。差別を悪とする世論が高まるなか、私たち人類学者は民族による文化の違いを説明するという本来の役目を放棄している。こうなると、ますます悪質な宣伝工作がはびこる。

忘れるなかれ、中国は常に新たな「金脈」を探している。例えば、台湾の信用を決定的に失墜させるようなフェイク画像を。

From thediplomat.com

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