もちろん、ライターの仕事に翻訳すべき「原文」はありません。ライターの場合、その「原文」にあたる「素材」自体を聞いたり調べたりして調達しなくてはならないところが一番違います。

そして、翻訳家が基本的には原文の順番を守って翻訳するのに対して、ライターは原文をあちこち入れ替えて構成し翻訳します。

その2点は大きく違いますが、相手の意図をくみ取って、最も適した日本語表現に置き換えるという点は、翻訳作業にとても似ていると感じます。

ライターの仕事は、ただインタビュー相手が話したことを短くまとめればいいわけではありません。その方が、どんな文脈でその言葉を発したのか。「コン・テキスト(文脈を合わせる)する」のが、ライターの仕事であり醍醐味なのです。

原文があってさえ、10人の翻訳家が翻訳すると、10通りの違う日本語の文章が生まれます。ましてや、原文を取材で集め、それを並べ替えて翻訳する私たちライターの原稿には、もっと大きな差が出るでしょう。

そして、その差は、取材相手の文脈をどこまで理解できたかに左右されます。あらゆる経験が、ライターの文章の糧になっていきます。

書く仕事がしたい

 佐藤友美[著]

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