<男女平等政策が進んだスウェーデンの父親たちの本音を赤裸々に描いたテレビ番組に保守派や右翼民族主義者が反発。リベラル派やフェミニストも疑問視。国を分断する騒ぎに>

スウェーデン人の男性(みんな子持ち)が8人、田舎の農家で輪になって座っている。夕闇が迫るなか、みんな目を閉じて、何やら唱えている。1人はアコースティックギターを抱えて静かに弦を弾き、残りの人の手には小さなロウソク。よく見ると、誰かが大きな鍋で熱いビーガン・チョコレートをかき混ぜている。

この「カカオの儀式」のクライマックスは男たちの告白だ。今まで口に出せなかった心の底の複雑な思いを吐き出して、みんな涙を流す。

昨年11月に公共放送スウェーデン・テレビ(SVT)で放映された連続テレビドキュメンタリー『3人のパパ』の最終回に登場する印象的かつ衝撃的なシーンだ。若い3人のパパたちはストックホルム郊外のリベラルな地域に暮らすが、別に「父親たちの隠れ家」を作り、そこで子育てにまつわる本音をぶつけ合う――だけではない。互いにハグし、裸で一緒に腕立て伏せをやり、「ジェンダーの不平等は至る所にある」と愚痴る。

「勘弁してくれ、こいつら本気かよ」。そう思った視聴者も多いという。

ヨナス・マンデルスタムとヨン・オスカーション、リヌス・ルンドクビストの3人が自分たちの「隠れ家」をYouTubeで紹介すると、その動画はたちまち爆発的に拡散した。こういう現象の常だが、拡散させた人の大半は3人を許せないと思っていた。

【動画】『3人のパパ』が自分たちの「隠れ家」を紹介する動画

「こいつを見るとストックホルムを爆撃したくなる」という書き込みがあり、「国中がこの3人を嫌っているぞ」というのもあった。

育児休暇取得者の3割

嫌われただけではない。公共放送で紹介された彼らの生きざまはスウェーデン国民を真っ二つに分断した。折しも9月の総選挙で大接戦の末に右派連合が政権を奪還したばかり。勢いづく保守派や右翼民族主義者は『3人のパパ』に、リベラルな都会人やスウェーデンの現代文化に巣くう諸悪の根源を見た。

対するリベラル派やフェミニストの間にも、遠くの隠れ家で父性について議論する暇があったら、もっと子供と過ごす時間を増やすべきではないかという疑問の声がある。

あまりに反響が大きかったので、放送局のSVTはゲスト数十人と多数の視聴者を集めてライブ討論会を開いた。テーマは、この番組から見えてくるのは「男らしさの危機」なのか否かだ。

立場も年齢もさまざまな人が参加したが、ある右翼の著名人は子育てに励む3人への嫌悪感を抑え切れず、こう言い放った。「私なら絶対、絶対にあんなことはしない。輪になって座り、よく知りもしない男に抱き付き、感情の話をするなんて。今の社会に必要なのは強さを示せる男を増やすこと。弱さを見せる男などは願い下げだ」

子育てに熱心な男性が「ゲイ乳母」とか「乳父」と呼ばれることも