例えばブチャでは、既に住民が地域社会を立て直し、町の再建が進んでいた。道路はきれいになっていて、子供たちの歩く姿もあった。首都キーウでもそうだった。少なくとも(10月半ばに)空爆が再開される前の時点では、人々の暮らしは「平時」に戻っているように見えた。カフェも再開されていた。

ウクライナの人々は口をそろえて、プーチンが戦術核を使うリスクに自分たちがおじけづくことはないと言っていた。そして、自分たちの戦い方は変わらないとも言っていた。

核兵器を使っても戦争の結末は変わらない。ただ勝利の日までにウクライナ人が耐え、背負わなければいけない負担が増えるだけだと。

現地を見て、ウクライナ社会の回復力の強さを、そして最後まで戦い抜く国民の決意を実感できた。

――西側諸国はウクライナに武器を供与し、さまざまな形で援助しているが、ウクライナ側を完全に制御できるわけではない。いい例がクリミア大橋の爆破や、モスクワでの暗殺だ(過激なロシア民族主義者アレクサンドル・ドゥーギンの娘を爆殺した)。こうしたことで、西側の支援態勢が揺らぐ懸念はあるか

アメリカのバイデン政権とウクライナのゼレンスキー政権は今も、非常に緊密な協力関係を保っていると思う。常にコミュニケーションを取っていることは私たちも把握している。

例えばゼレンスキーが反転攻勢を計画していたとき、アメリカ政府はシミュレーションに密接に関わり、ウクライナ政府の意思決定を助けたはずだ。

おっしゃるとおり、私たちにはウクライナ側を制御できない。最前線で戦っているのはウクライナの人々だ。そういう関係には、ちょっとした緊張感が付き物だ。

だからこそゼレンスキーは折に触れて、緊張をほぐそうと試みている。例を挙げれば、ウクライナ側は、ロシア領内を攻撃できる長距離ミサイルや攻撃システムの供与を求めている。

しかしアメリカ側は、ウクライナを完全には制御できないため、武器供与で不必要に戦闘がエスカレートする事態を懸念している。

それでゼレンスキーは、こう言った。「よし、こちらが選んだ標的について、ホワイトハウスが拒否権を行使するのを認めよう」と。

これは両国の良好なパートナーシップを示す好例だが、もちろんアメリカとウクライナ両国の利害が分かれる場面も出てくるだろう。そうした場合に備えて、両国は問題をうまく処理する方法を常に模索している。

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 戦争インフレ
2026年4月28号(4月21日発売)は「戦争インフレ」特集。

ホルムズ海峡封鎖でガソリン・日用品が高騰。世界経済への悪影響と「出口」を読み解く

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます