――近年のイランでは、抗議デモが頻発している感がある。多くは不正選挙に対するものだが、それ以外の部分で、今回のデモは何が違うのか。

2009年に大統領選の結果に対する大規模な抗議デモが起きた。非常によく組織されたもので、「グリーン革命」として世界的にも注目を浴びた。

当時のスローガンは、「私の1票はどこへ行った」。つまり、現体制に疑問を投げかけるのではなく、自分の票がなぜきちんとカウントされないのか、という問いだった。

そもそもイランの大統領選は自由でも公正でもない。候補者も出馬する段階で慎重に絞り込まれている。

それでも、当時の現職マフムード・アハマディネジャド大統領が、まともな開票作業も始まっていないのに勝利宣言をしたことに、人々の不満が爆発した。ただ、基本的にデモはテヘランの中心部に限定されていた。

だが、それ以降の抗議デモは大きく異なる。2017年12月と18年1月の抗議デモは全国的なもので、明らかに反政府的な色合いを持っていた。

2019年11月には、ガソリン価格が突然引き上げられたのをきっかけに、全国的に大規模デモが起きて、現体制に対する批判へとつながった。

――抗議行動がどんどん激しくなり、混乱を帯びたものになってきたということか。

人々が昔ほど抗議の声を上げることに恐れをなさなくなったことは間違いない。抗議デモが起きる頻度が高くなり、場所も都市部だけではなくなった。

ある地方での水不足がきっかけだったり、低賃金に対する不満がきっかけだったりと、原因も多種多様だ。

だが、今回は経済難などではなく、神権政治の中核を成すイデオロギーが問題になっている。ヒジャブの着用義務は、イスラム神政を口実にした人権抑圧を象徴するルールだ。

性差別的な法的枠組みの象徴でもある。なにしろ裁判では、女性の証言は男性の証言の半分の価値しかないと見なされるのだから。

イランには民族的・宗教的マイノリティーや、性的少数者に対する差別もある。

――昨年の大統領選で、イブラヒム・ライシが選出されたことも議論になった。

注意しなくてはいけないのは、イランの真のトップは最高指導者であって、大統領ではないことだ。

最高指導者は選挙で選ばれるわけではなく、誰に対しても説明責任がない。大統領は国連や世界の舞台に送り込むイランの「表の顔」にすぎない。

現在、ネット接続が完全に遮断されるのではないかという懸念がある