220920p18_EHK_03.jpg
1994年、愛犬を連れてウインザー城を散歩するエリザベス女王 JULIAN PARKERーUK PRESS/GETTY IMAGES

残念ながら、チャールズには母親ほどの輝きがない。即位したときのエリザベスは25歳、魅力的でエネルギッシュな女性だった。

対するチャールズは、皇太子として最も長い年月を過ごし、73歳で王位を継承した。とてもフレッシュとは言い難い。

女王は、君主に求められる公平性の原則を逸脱しないよう細心の注意を払っていた。一方、チャールズは建築からアナグマの殺処分まで、さまざまな問題について自分の見解を表明してきた。

女王は生前に英連邦諸国を説得し、チャールズが自分の後継者として、自動的に連邦の君主となることを容認させた。だが英連邦諸国の一部には、連邦トップの座は英国王室の独占物ではないとする意見もある。

もう一つ気になるのは、女王亡き今、「連合王国」としてのイギリスの統一性を維持できるかどうかだ。

2014年に行われたスコットランド独立の是非を問う住民投票では、スコットランド民族党も独立しても英連邦にはとどまり、エリザベス2世を国家元首として迎えると説明していた。人気の高い女王との関係断絶は不利と判断したからだろう。しかし次に住民投票が行われるとき、どうなるかは分からない。

「王冠をいただく者に、心やすまる時はなし」(シェークスピア『ヘンリー4世』)

偉大な母から王位を継承したチャールズは今、この言葉をかみしめているに違いない。また父(故フィリップ殿下)が1969年に訪問先のカナダで発した次の言葉も忘れるべきでない。

「もしも国民が今の王室は受け入れられないと決めたなら、王室を変える権利は国民にある。私の思うに、君主制が君主のためにあると考えるのは大間違いだ。そうではない。君主制は国民のために存在する」

国民の目は厳しい。果たしてチャールズは、イギリス王室がまだ役立たずでも時代遅れでもないと証明できるだろうか。

幸いにしてこのタイミングは悪くない。新首相リズ・トラス率いる保守党政権の前途は多難で、国民の分断は一段と深まるかもしれない。そうなれば王室の存在感が高まる。

伝統と儀礼、そして安定感。それこそが王室の最大の価値なのだから。

From Foreign Policy Magazine

だが記念碑の除幕や勲章の授与、外国要人の接遇(政府の要望に応じて、おだてもすれば懐柔もした)など、儀礼的な務めを淡々とこなし続けることで国民との絆を深めた。ロイヤル・アスコット競馬場で女王の愛馬が優勝すれば、必ず大きな歓声が上がったものだ。
ニューズウィーク日本版 台湾有事の新シナリオ
2026年4月21号(4月14日発売)は「台湾有事の新シナリオ」特集。

米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由

※バックナンバーが読み放題となる 定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます