第二に、ナイジェリア国内の勢力との連携強化である。JNIMは、単独でのナイジェリア浸透に加え、イデオロギー的に近しい現地の武装勢力、特にアンサール(Ansaru)との提携を通じて、その影響力を急速に拡大させようとしている。

ナイジェリアの地理や現地社会の慣習に精通するアンサールは、JNIMにとって、武器調達、地域社会へのサービス提供を通じた支持層の獲得、そして戦闘員のリクルートといった多岐にわたる側面で極めて有用な協力者となる。

この連携が実現した場合、ナイジェリア西部地域におけるアルカイダ系勢力の勢力基盤は、短期間で著しく強化される可能性も排除はできない。

第三に、ナイジェリア治安体制の脆弱性の利用である。ナイジェリア軍は現在、北東部でイスラム国西アフリカ州(ISWAP)やボコ・ハラムの残党と戦い、中西部では多数の山賊(バンディット)への対応に追われるという、多正面作戦の状態にある。

このため、軍事・警察リソースは深刻な不足に直面しており、今回の西部国境沿いへの攻撃は、このリソースの偏在と不足という構造的な弱みを突いたものである。新たな戦線を開くことで、ナイジェリア政府にさらなる防衛圧力をかけ、国家の安全保障体制を疲弊させる狙いがある。

今後のテロ情勢の行方:多重脅威の複雑化

JNIMのナイジェリア侵入は、同国のテロ情勢を悪化させる可能性がある。まず、ナイジェリア政府は、短期的な対応として、西部地域への武装勢力の浸透を防ぐため、国境警備の厳格化と対テロ作戦へのリソース集中を余儀なくされるであろう。

国境インフラの強化や、爆発物処理班(EOD)への資源配分を優先し、国際的な対テロ支援、例えば、環サハラ対テロ・パートナーシップ(TSCTP)を通じた支援の拡大を模索することも予想される。

しかし、この西部への注力は、北東部で活動するISWAPやボコ・ハラム対策に割くリソースを減少させるというトレードオフを生じさせるかも知れない。結果として、一時的にJNIMの活動が抑制されたとしても、国内の他の地域、特に北東部におけるテロや暴力のリスクが高まるという、「モグラ叩き」のような不安定化の連鎖が発生する可能性があろう。

さらに深刻なのは、ナイジェリア国内におけるテロ組織間の勢力争いの激化である。JNIMとアンサールによるアルカイダ系勢力の台頭は、ナイジェリアの主要な脅威であるISWAPにとって、西部のリクルート源と支配地域に対する直接的な脅威となる。

ISWAPは、この勢力拡大を阻止するため、アンサールの拠点や彼らと協力的な地元住民に対する攻撃を激化させ、既存の勢力圏維持を図るであろう。

また、ISWAPは、リソースと戦闘員の確保を巡る競争に打ち勝つため、ナイジェリア西部の地元の犯罪集団や山賊との一時的な連携を模索し、共同での誘拐や略奪を通じて、資金力と戦闘力を維持しようとすることも考えられる。

これにより、ナイジェリアのテロ情勢は、従来の「イスラム過激派 対 政府」という二項対立から、「アルカイダ系(JNIM/アンサール) 対 イスラム国系(ISWAP) 対 政府」という三つ巴の複雑な脅威へと変貌する。治安当局は、イデオロギーも戦術も異なる複数の敵と、国境全域で同時に戦うという、極めて困難な状況に直面することになる。

国家と地域の危機としての認識