有志連合の深慮遠謀

では欧州側は何を考えているのか。

エマニュエル・マクロン大統領がゼレンスキー大統領に「アメリカはウクライナを裏切る可能性がある」と話したと、独誌『シュピーゲル』が機密電話会議の議事録をリーク報道した。

実際には「裏切り」に苦しんでいるのは、欧州のほうだ。12月に発表されたアメリカの『国家安全保障戦略』がどんなに大きなショックを欧州に与えたか。ウクライナに近い東欧の人々の中には、歴史的にドイツ(やフランス)を信用できない意識が強い人が多く、アメリカに頼る気持ちが大きく勝っていた。その彼らすら、考えを変えざるをえないのでは、と言われるほどのショックである。

「戦略的あいまいさ」を自認するマクロン大統領が提唱した「有志連合」は、12月15日発表の共同宣言では「多国籍軍」となっていた。

フランスは「アメリカに頼らない自律性」のDNAが脈々と流れている国だ。シャルル・ド・ゴールは1966年、NATOから一部脱退した。NATOの軍事指揮権から外れてフランスの軍隊と核兵器の独立を保持したのだ。完全復帰したのは2009年だ。

マクロン大統領には48歳と若く、フランスの力はEUと共にあるという強い戦略と信念がある。2018年にはロシアや中国などの脅威に対して、欧州が米国だけに依存することなく自国を守ることができるよう「真の欧州軍」の創設について公に発言した。今回の「多国籍軍」は、そのための実績を積み上げているようにも見える。

NATOの欧州化

現実路線としてマクロン大統領や支持者が考えているのは、NATOの欧州化ではないだろうか。欧州の負担を増やすという意味以上の欧州化のことだ。

具体的には、NATO欧州軍の最高司令官「SACEUR」をヨーロッパ人にすること。この職は代々高位のアメリカ軍人が務めてきた。

ドナルド・トランプ大統領は欧州に極めて冷淡である。ただ現実には、米と欧の「離婚」に反対する人々はアメリカに党を問わずに存在し、現政権内にもいるかもしれない。

この状況で、アメリカ抜きでは存在できないNATOの枠組みはそのままで、欧州軍最高司令官はヨーロッパ人にするという案は、トランプ政権にとって悪くない折衷案になる可能性は高い。

「欧州の自律化」最大の課題は