<中国の若い民族主義者「小粉紅」は、これまでロンドンにある大英博物館を憎んできた。歴史のどさくさに紛れて、大量の中国文物を「盗んだ」と考えてきたからだ。そんな彼らの態度が一変した。きっかけは、故宮博物院と並び称される国家級博物館の南京博物院で昨年末に浮上した不祥事だ>
中国の若い民族主義者である「小粉紅(シアオフェンホン)」は、これまでロンドンにある大英博物館に強い憤りを抱いてきた。館内に展示されている大量の中国文物を、帝国主義による略奪の動かぬ証拠と見なし、SNSで「中国の国宝を返せ」という声を繰り返し上げ、ロンドンの街頭で抗議する。そんな彼らの態度が最近一変した。
発端は、故宮博物院と並び称される国家級博物館の南京博物院で昨年末に浮上した不祥事である。本来は博物院の収蔵庫に保管されているはずの明代の画家・仇英(チウ・イン)の名品「江南春」図巻が昨年5月、北京のオークション会場に出品され、評価額が8800万元(約20億円)に達した。
博物院側の説明によれば、1960年代に贋作と鑑定され、97年に正式に収蔵解除されて、2001年にたった6800元(約15万円)で「匿名の顧客」に買われていた。
一連の経緯が「江南春」の寄贈者の遺族が起こした裁判で分かり、南京博物院の元院長の徐湖平(シュイ・フーピン、風刺画の人物)が、大規模な「監守自盗」に関与していた疑いが浮上。先月、南京博物院の元職員が徐の収蔵品転売を実名告発し、徐は当局に拘束された。
南京博物院には、国共内戦期に北京の故宮博物院から移された10万点以上の文物が封印されたまま保管されていることになっていたが、徐がそれらの一部も勝手に「贋作」と認定してオークションに出していた疑いもある。
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