<ウクライナ戦争が突き付ける21世紀の地政学的現実とその経済的な影響を、本誌単独インタビューで語った>

巧みな策謀でロシアがウクライナからクリミア半島を強奪した2014年、アナス・フォー・ラスムセンはNATOの事務総長だった。あれから8年、今はロシアが本気でウクライナに攻め込み、NATO陣営も本気でロシア側に対抗している。

今こそ世界中の民主主義国は団結して、独裁者たちの陣営に立ち向かうべきだと論ずるラスムセンに、本誌トム・オコナーが4月末に単独インタビューした。

ラスムセンは元デンマーク首相で、退任後の2009年から2014年までNATOを率いる立場にあった。現在は自ら創設したNPO「民主主義同盟財団」の代表として、各国における民主主義の発展と、民主主義陣営の連帯強化に努めている。

しかし今は、NATO加盟を希望するヨーロッパの独立国にロシアが公然と戦争を仕掛け、アジア太平洋地域やアフリカでは中国が欧米流の民主主義に対抗する勢力圏の構築を進めている時代だ。

こうなると民主主義陣営と独裁陣営の緊張が高まるのは必至であり、これまでは緊張緩和の役に立つと考えられていた両陣営間の経済的な絆も、遠からず断ち切られるのではないか。ラスムセンはそう危惧している。

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――ロシアのウクライナ侵攻を受け、アメリカとNATO加盟国、そしてEUはロシアへの制裁などで結束を強めているが、こうした措置による経済的な打撃は国によって異なる。この団結は維持できるか

むろん、団結の維持は容易でない。アメリカとヨーロッパの分断を図る動きもあるはずだ。だが私の考えでは、この団結は維持できる。

エネルギー問題を例に取ろう。ロシアはポーランドとブルガリアへの天然ガス供給を一方的に停止した。これで(ロシア大統領のウラジーミル・)プーチンは、エネルギーを武器として使う意図を明確にした。

しかし武器だと言われたら、ヨーロッパも一致団結して対抗する気になる。ロシアがそうやってくる限り、こちらも団結を強める。

――確かに、ロシアがこう出るのを待っていた向きは多いだろう。支持率が低迷していたアメリカ大統領のジョー・バイデンもその1人だと思う。さて、あなたはバイデン政権の外交政策をどう評価するか?

政治家のリーダーシップに関しては、国外の評価と国内の評価が異なることは珍しくない。ヨーロッパから見ると、バイデンはかなりよくやっている。ヨーロッパとアメリカの連帯はかつてなく強い。

バイデン大統領のリーダーシップが、こういう状況をもたらした。この点に関して、バイデン政権に不満はない。

それに、バイデンは何度か自分の気持ちを率直に述べている。ポーランドを訪問したときは(プーチンを「権力の座にとどまらせてはいけない」という)原稿にない発言をした。あれはヨーロッパ人の心に響いた。経験豊富な指導者であるだけでなく、時には率直に本音を語れる人間だという印象を与えた。

その前には、中国が台湾に侵攻したらアメリカは絶対に守ると断言した。(中国を名指しするのは)外交レベルでは禁忌だが、バイデンは気にしなかった。ヨーロッパの人間から見ると、あれはすごく新鮮だった。

「アメリカは戻ってきた」という姿勢が具体的に示された