平石:まさにその通りです。準備したリストに従ってしまうと、「これとこれを言えた」と塗りつぶしていくだけになります。それは違う。議論が始まったら、言いたいことを言わせて受け止めることがファシリテーターの仕事になります。それぞれの発言者から生じる化学反応をプラスにしていく、それが役割なんです。自由に発言できる心理的安全性の高い場をつくる。だから、あなたのことはとてもわかっていますよ、好意を持っていますよと伝えるために人についての準備をしっかりします。

一方で、論点についての準備ももちろん必要です。それがないと、最終的にはここを明確にしたいというゴールをつくれません。議論の軌道修正もできませんよね。これについても、議論の真っ最中に資料を探している暇はないので、事前にできる限り準備して、議論の要点、軸を頭のなかで何度も反復して叩き込んでおく。しかもそれは、たくさん情報をインプットした状態でやらないといけません。情報が足りない状態で軸を決めてしまうと、軸自体がずれてしまうことがありますからね。

── とてもよくわかるのですが、全部叩き込みたくても、忙しいと準備の時間が足りないと思うのもまた人情です。あえて優先順位、メリハリをつけるとしたらどうなりますか?

平石:私の場合は、収録本番までの時間を逆算して、その時間でこれだけは準備できていないと出演者の信頼を損ねる、という線をまず見極めます。それで、テーマなどを見て優先順位の高いものから潰していくんです。私も全部調べられるわけではありませんから、そういうときは「ここまでは調べてわかりましたがここから先がわからないのでうかがいます」というスタンスを明確にします。

この姿勢で、ファシリテーターが論客の一人として立つつもりで参加すると、ほかのメンバーも本気で話してくれるようになります。上からリストを潰していくのとは違う関わり方になりますから。あとは、参加者が返してきた言葉に対して、今日はここに関心が集まっているんだなという点をつかまえて、話の聴き方を変えていくこともあります。

いずれにせよ、相手が絶対に言いたいこと、私たちが聴きたいことをすり合わせながら、センターピンが何かをふまえていくことが肝要です。それを発揮するための準備9割です。

ファシリテーション力を身につけるのは難しい?

── いかに準備ができたとしても、場を制してファシリテーションをしていくには、やはりセンスや持って生まれた性格が重要になるのではないか、と考える人も多いと思います。平石さんは、もともとファシリテーションのようなことがお得意だったのですか?

平石:いいえ、そんなことはありません。仕事の経験から学んでいった部分が大きいと思っています。

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