それでもスタンダードを選ぶ理由

とはいえ、東証1部上場企業のすべてが、プライム市場への移行を望んでいるわけではありません。なかには、プライム市場への上場基準を満たしているにもかかわらず、自社の意思でスタンダード市場への上場を選択した企業もあります。

あえてスタンダード市場を選ぶ理由としては、「プライム市場に求められる情報開示などのコスト」のほか、「国内事業をメインとしており、すでに知名度もあって財務的にも不安がない」などが挙げられます。

●エバラ食品工業<2819>

実際に、プライム上場の基準を満たしながらも意図的にスタンダード市場への上場を選択したエバラ食品工業<2819>を見てみましょう(参照:2021年12月13日ニュースリリース「新市場区分における「スタンダード市場」の選択申請に関するお知らせ」)。

ここには、あえてスタンダード市場を選択した理由として、「いずれの市場を選択しても、持続的な成長とコーポレート・ガバナンス体制の強化を通じて中長期的な企業価値向上に取り組むという当社の基本方針は変わるものではない」とあります。

さらに「プライム市場を選択した場合に求められる基準の中には、更なるコストや労力を要する点があり、当社自身の規模を踏まえた上で、限られた経営資源を新たな価値を創造する商品やサービスの開発とそれを実現する組織・人材の活性化に振り向けることが企業価値向上に資すると考える」として、経営資源の方向性を明確化しています。

また、2021年6月末の移行基準日ベースでは売買代金に関する基準をかろうじて満たしたものの、安定的・継続的に充足する状態ではない点も理由に挙げ、投資家が安心して売買・保有できる環境を重視した、と説明しています。

エバラ食品工業の株価はその後、食品を含むディフェンシブ株の再評価によって下落する局面もありましたが、堅調な推移となっています。少なくとも、スタンダード市場を意図的に選択しつつ、その背景についてきちんと開示している点は、一定の投資家の評価を得られたのではないでしょうか。

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東証改革は始まったばかり

4月で市場区分は変更されるものの、東証の市場改革はまだ始まったばかりで、その枠組みについては今後も変更される可能性があります。

2022年10月には、TOPIX構成銘柄の2回目の判定が行われ、流通株式時価総額が100億円未満の企業は組み入れ比率が段階的に削減されます。当落線上の企業にはマイナスインパクトとなりそうです。

マザーズ指数などについては、急に算出を取りやめると機関投資家の運用やETFなどに与える影響が大きいため、しばらく算出は継続される予定です。そのため、「市場はないのに指数はある」という不思議な事態が生じそうです。

4月に再編が実施された後も、東証の市場改革の動きはウォッチしておきたいところです。

[執筆者]

佐々木達也(ささき・たつや)

金融機関で債券畑を経験後、証券アナリストとして株式の調査に携わる。市場動向や株式を中心としたリサーチやレポート執筆などを業務としている。ファイナンシャルプランナー資格も取得し、現在はライターとしても活動中。株式個別銘柄、市況など個人向けのテーマを中心にわかりやすさを心がけた記事を執筆。

※当記事は「かぶまど」の提供記事です
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