いや、双眼鏡で見えるかどうかの距離どころではない。テレビカメラの向こうにいる数え切れない人々を一緒に滑っている気分にさせられるのが、今の羽生だ。その人たちこそ、羽生の言う「皆さん」なのだろう。

なかには羽生の言動を「優等生的」「偉そう」と受け止め、嫌う人たちもいる。SNSには「嫌いだと言いにくい空気が嫌い」といった書き込みも見つかる。

ただ、羽生が努力と結果を積み重ね、今いる場所にたどり着いたことは確かだろう。

メディアジェニックな羽生が、自ら発する言葉に無自覚なはずはない。彼は自身の言葉の重さをどう捉えているのか。

2020年12月、全日本選手権を制した後の発言にヒントがあった。コロナ禍を意識したコメントの中で、羽生はこう語っている。

「暗いトンネルの中、絶対いつかは光が差すと思うので。そういうものも自分の演技から、言葉たちから感じていただけたらと思います」

羽生結弦にとって「言葉たち」は、「皆さん」とつながる上で、演技と同じくらい大切な媒介なのだ。

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