<MVP「満票選出」を果たした大谷翔平は、MLBにとって、ファンにとってどんな存在か。ショーヘイがアメリカで愛される理由とは。本誌10月12日号「アメリカが愛する大谷翔平」特集より>

大谷翔平は8月31日のニューヨーク・ヤンキース戦に、ロサンゼルス・エンゼルスの投手として先発登板するはずだった。しかし彼は、指名打者として打席に立っただけ。その3日前、大谷はサンディエゴ・パドレス戦での第1打席で右手首に投球が直撃し、まだ腫れが残っていた。

ヤンキース戦での登板が見送られたのは、大谷にとっても、アメリカ中にいる彼のファンにとっても、残念なことだった。大谷は6月末のヤンキース戦に先発し、1回ももたずに7失点でノックアウトされていたため、多くのファンがリベンジを期待していた。

手首の腫れのせいで、それはかなわなかった。ところが大谷は、この試合でファンの記憶に長く残るプレーを見せる。エンゼルスは5回に重盗を仕掛け、大谷は三塁からホームスチールを成功させたのだ。同一シーズンに勝利投手となると同時にホームスチールを成功させた例は、2001年以来だ。

現在の米大リーグ(MLB)で、最高にして最もエキサイティング、そして最も目が離せない選手──大谷がそんな存在であることを示す例が、また1つ加わった。

大谷はこの夏、毎週のようにアメリカ中を沸かし続けた。彼はまさにアーティスト。マウンドからは速球とスライダーでコーナーを丹念に突き、打者を翻弄する。そうかと思えば、打席では「傑作」の数々を生み出し、走者としてはスピードと知性を発揮して相手を粉砕する。

大谷はエンゼルスのクラブハウスでも、アメリカンリーグでも大人気。投打の二刀流として初めてシーズンを通してプレーする今年は、世界的に見てもMLBで最も人気のある選手になった。9月半ばには米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に、英王室を離脱したヘンリー王子夫妻らに並んで選ばれた。

「彼が成し遂げているのは大変なことだ。正直、理解に苦しむね」と、ヤンキースのアーロン・ブーン監督は言った。「打つだけでも大変だというのに、腕の心配をしつつ毎週投げるなんて想像できない。おまけに先発投手として、試合をつくらなくてはならない。とにかく彼は、誰よりも才能にあふれている」

今シーズンの各賞が発表される11月、大谷はアメリカンリーグ最優秀選手(MVP)の大本命となる。栄冠に輝けば、日本でキャリアをスタートさせてMLBのMVPを獲得する例は01年のイチロー以来だ。

関係者の間では、大谷が満票で選ばれるべきだという声も強い(その可能性もなくはない)。アメリカンリーグMVPの投票権を持つのは、全米野球記者協会に所属する記者のうち、わずか30人だ。

「いい打席を毎日続けたい」