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バンク・オブ・アメリカのベサント(上)やマイクロソフトのナデラ(下)らは生産性低下や長時間勤務といったリモートワークのリスクを指摘する MICHAEL NAGLE-BLOOMBERG-GETTY IMAGES, JEENAH MOON-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

公衆衛生上の緊急事態の中でスタッフを管理するのは企業にとって大変な難題だ。リモートワークと出社のスケジュールを調整して、従業員のさまざまなニーズに対応し、同席する必要のある社員の出社日時を合わせると同時に、リモートの社員もチームの大切な一員だと感じられるようにしなければならない。

これに対応できる企業は人材獲得競争で明らかに優位に立つと、デロイトコンサルティングのダン・ヘルフリッチCEOは言う。実際、同社はテレビ会議アプリZoomを使い、リモートか対面かについて社員の意見を聞いている。

「社員の権限を拡大し、彼らを信頼してチーム内の多様な意見を検討し、それらに対応していく組織が勝つ」

調査結果もそれを裏付けているようだ。フォーチュン誌が選ぶ米主要企業1000社の社員を対象とする世界規模の調査で、職場が好きな社員はそうでない社員に比べて、優れた業績を上げる可能性が4倍高いことが分かった。

調査を実施したベストプラクティス・インスティテュートの創設者でCEOのルイス・カーターは「社員の幸福度と生産性との強い結び付きを示す資料が数多くある」と指摘する。

ワクチン接種が加速するにつれ、企業は出社勤務の方針策定に忙しくしている。健康リスクが下がることを前提に、かつ、ウイルスの変異株と人々の無謀な振る舞いが第4波を招かないことも願いながら──。

他企業との探り合いが続く

一部の企業は、ヘルフリッチが社員に約束する「皆さんの幸福のほうがデロイトの幸福より重要」を指針としている。

逆に、バンク・オブ・アメリカのベサントと見解を同じくする企業もある。彼女は、リモート勤務に関しては「多くの人のニーズが個人の欲望に勝る。企業全体としての役割が当社の選択を左右するべきだ」と、米フォーブス誌に語った。

今のところ「企業は互いに探り合っている。どこが最初に出社勤務に踏み切り、どんな悪評が立つか。他社がすぐ後に続くかどうかは、その結果次第だ」と、ペンシルベニア大学経営大学院のカペリは言う。

シングルファーザーのヒッキーや一部の同僚のように、安全な状況になるまで出社勤務を待ってほしいと願う社員は、自分たちの訴えに上司が耳を傾けてくれることを祈るしかない。

「上司は、そういう要望が高まっているのでもう一度見直す必要があるかもしれない、とほのめかしてはいる。今のところ私の頼みの綱はそれだけだ。上司のご機嫌次第でどうなるか分からない」

言い換えれば、企業側が極めて有利ということだ。職場で激しい議論が続くなか、協力的でない社員がいたら、代わりはいくらでもいる。

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