日本の不動産市場の一部が過熱し始めた理由は、国内外からの投資マネーの増加だけではない。

日本政府や日銀が不動産市場を下支えしている。新型コロナの影響で収入が減った個人事業主などを支援する家賃支援給付金は、事実上、不動産市場への公的資金注入に当たる。また、日銀によるREIT(不動産投資信託)やETF(上場投資信託)の積極的な購入は不動産・株式市場の支援策と言える。

こうした流れを受けて不動産や株式などのリスク資産の上昇を契機とした1990年代のようなバブルが東京の不動産市場で発生する可能性は高いと筆者はみている。

とはいえ、投資マネーが向かう先は東京を中心とした大都市、なかでも価格帯で言えば100億円以上の大規模な不動産に限定されている。

アベノミクス以降、国内不動産市場は「価値維持もしくは上昇」の15%、「数十年かけて下落し続ける」70%、「無価値あるいはマイナス価値」の15%という極端な三極化が進行してきた。今後、かつてのような「バブル的」な局面に突入する可能性があるのはトップ15%に限られる。

ここで言う「バブル的」とは、例えば「マイナス利回りでの取引」といったもの。1990年代バブル期やリーマン・ショック前のプチバブル期には、不動産の買いが買いを呼び、得られる賃料を勘案すると利回りがマイナスになる価格帯での取引が散見された。その理屈は「賃料上昇は後からついてくる」というものだ。

今後、なかば実体経済を無視する形で、世界的に見て相対的に割安感のある日本、特に東京を中心とした大都市部の不動産が、国内・海外マネーの標的になる可能性は高い。いわば「局地的バブル」の様相を呈することになるだろう。

新型コロナの感染拡大が収束しても、市場にあふれた投資マネーがすぐに消えることはない。不動産市場は、基本的に株式市場と連動しているため、日経平均株価が好調に推移する限り、この傾向は続くだろう。

一方で日本の全国レベルの不動産市場を見れば、2019年10月の消費税増税以降、新築・中古、マンション・一戸建て共に取引は低調だった。

「都心・大都市部」「駅前・駅近」といったワードに代表される好立地かつ高額な物件は好調だが、その一方で「立地に難がある」物件はことごとく厳しい状況にある。

長期的に見れば、人口・世帯数の減少が必至な日本では住宅需要全体がしぼむ傾向が続く。消費者サイドでは、立地条件、耐震性・省エネ性といった建物の基本性能など、物件の長期的ニーズを吟味した上で選択する、慎重な姿勢が求められることになるだろう。

<2021年2月9日号「コロナバブル いつ弾けるのか」特集より>

国際不動産サービス会社ジョーンズ・ラング・ラサールの調べによると、2020年第2四半期の世界の商業用の不動産投資額は、渡航制限、経済への打撃、先行き不透明感などが影響して、前年同期比で55%減の1070億ドルに激減した。
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