経済グローバル化の第1波の後退期には、ハイパーインフレと恐慌の時期を挟んで2つの世界大戦が起きた。グローバル化の第2波が勢いを失い、各国の政府がロドリックの言うトリレンマに伴う緊張への対処に追われる現状では、前回ほど深刻な事態に至らないことを願うほかない。一方で多国籍企業への課税強化と温室効果ガスの排出削減(こちらも忘れてはならない問題だ)に向けた動きからは、十分に安定し、均衡の取れた多極的な世界が生まれる可能性もある。

もちろん、アメリカ次第という面も大きい。アメリカは現在、恐ろしく無能で支離滅裂な政権がもたらした混乱と機能不全にあえいでいる。ドナルド・トランプ米大統領の衝動的なナショナリズムは幅広い脱グローバル化と軌を一にしており、敵国も友好国も同じように扱う手法のせいで、均衡の取れた多極的な世界に向けた道のりはさらに困難になりそうだ。

トランプ政権が1期で終わるとすれば、「置き土産」の中で後々まで尾を引きそうなのが「中国が世界のリーダーの地位に上り詰めるのをアメリカが後押しした」という問題だ。

中国の通信機器大手のファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)がアメリカの技術を利用することを禁じた措置がいい例だ。こんなことをすれば中国は、エネルギー貯蔵から機械学習まで幅広い戦略的技術分野にわたる最先端技術を手中に収めるための投資を加速させるだけだ。一方でアメリカには、それと比肩し得るような、21世紀の米経済建設のための前向きな計画は存在しない。

今後の動きは、今年11月の米大統領選の結果に懸かっている。第2次大戦終結後の75年間、アメリカは重要な戦略的決断を何度も迫られてきた。今回の選挙もまさにそれだ。

©Project Syndicate

<2020年9月1日号「コロナと脱グローバル化 11の予測」特集より>

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18世紀後半に産業革命が始まって以来、世界経済は2つの大きなグローバル化の波を経験してきた。そして今、明らかに第2の波からの後退が進んでいる。これは、防御しやすい態勢を整えるための秩序ある後退なのか。それとも退却を余儀なくされた敗走なのだろうか。

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