――対談では日本についても多くを言及してもらった。率直に言って、日本人には見えていないが、ブレマーが気付いていることはどのようなものがあるだろうか?

ポトリッキオ:なぜユーラシアグループのウェブサイトに日本語サイトがあり、なぜブレマーがGゼロサミットを日本で運営するのか。それには理由がある。このパンデミック(感染症の世界的大流行)が日本の国際的地位に及ぼす影響について、ブレマーは多くの視点を与えてくれた(が、おそらく日本人は気付いていない)。これに対するニューズウィーク日本版の読者反応がとても楽しみだ。

――Gゼロの概念を始め、ブレマーの見識には一貫性がある。彼が正鵠を射抜けるのはなぜだろう。

ポトリッキオ:ブレマーが率いるユーラシアグループは「政治ファースト」を徹底している。私がブレマーと初めて話をしたとき、このスローガンについて尋ねたことがある。顧客への奉仕こそが最優先ではないのかと思ったからだ。

彼は真剣かつ好奇心旺盛な政治科学者だ。世界秩序がどのように運営されているか、その科学的側面に焦点を当てることによってのみ、顧客が必要とする情報を与えることが出来ると考えている。ブレマーは地政学リスク分析という分野を発明した。その活動を支えるため、精緻で厳格な政治分析を日々行っている。

――リーダーシップの専門家として、ブレマーが対談で示した将来の指導者象、あるいは世界的課題を解決する方策についての感想を教えて欲しい。

ポトリッキオ:ブレマーのツイッターには、4年近くもピン止めされているツイートがある(おそらく、どんなセレブたちがピン止めしているツイートよりも長い期間)。

それは、異論を歓迎するという内容だ。彼はこうツイートしている。「もしあなたが嫌いな人のツイッターをフォローしていなければ、それは間違っている」。ブレマーは、自身と意見が合わない人の考えがブレンドされていく過程を好む。世界をよりクリアに見通すためには、意見が大きく異なる人たちとの非常に濃密な「バトル」が不可欠だと思う。

彼のことをインテリ論争を好む人物と言い切ることは簡単だが、ブレマーは正しい主張を得るために、恒常的に自身の科学的分析と直感を挑戦にさらしている。その意味で、ただのインテリではない。

私たちは世界的な課題を解決するために、解決方法の視野を広げなければならない。ブレマーは、彼の世界観に対するチャレンジを寛大に受け止めてくれるだろう。この対談で彼が語った内容について、ニューズウィーク日本版の読者から異論が噴出することを楽しみにしている。そうなればきっと、世界的課題を克服するための、大きな風穴が空くに違いないから。

20200908issue_cover150.jpg
2020年9月8日号(9月1日発売)は「イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界」特集。主導国なき「Gゼロ」の世界を予見した国際政治学者が読み解く、米中・経済・テクノロジー・日本の行方。PLUS 安倍晋三の遺産――世界は長期政権をこう評価する。
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます
次の予定に少し遅れると、ブレマーが秘書らしき人にメールで伝える姿をZOOMの画面越しに見ながら、彼と対談していた本誌コラムニストのサム・ポトリッキオ(ジョージタウン大学教授)と目が合った。「ほら」というサムの声が聞こえるようだった。ブレマーをよく知るサムは取材前、「寝だめしたほうがいい」と、私にアドバイスをくれていたからだ。