CBSM手法の基本的な特長は、ローカルな環境問題の障害(barriers)を抽出し、それらを解決することによって獲得される便益(benefits)を客観的な事実によって明らかにし、こうした解決手法の公益性を地域住民に理解させ、実践させることで成果を挙げてきたことである。

マッケンジー=モーアのCBSMは社会科学、とりわけ、社会心理学や環境心理学から、行動変革をもたらすような「ツール」(手段)を用いて人々に行動変革を実践させる。このCBSM手法には、次の5つのステップがある(同書第1章)。

1. ターゲット(標的)とすべき行動を選択する。

2. 選択された行動への「障害」(barriers)、および、「便益」(benefits)を識別する。

3. 行動への「障害」を減らし、行動の「便益」が目に見える形で自然と増えてくるような戦略を構築する。

4. 3の戦略を実施する。

5. その戦略が実施されたらすぐに、広範囲な実施、および、継続的評価の査定を行う。

環境問題の解決のために必要とされる各利害関係者の行動変革という目標達成段階に到達していくためには、次の3つの情報、すなわち、

(1)その行動にはどれほどの「インパクト性」(影響力性)があるのか(impactful)

(2)その行動の「浸透性」(penetration)のレベルがすでにどのくらいあるのか

(3)その行動をまだ行っていない人々がそれを選択する「確率性」はどのくらいあるのか(probable)

が必要とされている。

こうしたCBSM手法はどのように、社会的課題(同書では、環境問題)に対して適用されるのだろうか。

例えば、家庭部門の「廃棄物の減少」に対しては、廃棄物の減少を促進させるターゲット対象(一般市民)にとって、廃棄物の減少のための行動を抑止させる要因を「障害」として捉え、それを取り除いていくための方策、さらに、廃棄物の減少を促進することによってターゲット対象が獲得する「便益」について、パイロットテスト(本調査前の予備調査)を通じて明確化し、廃棄物の減少につなげていく。

さらに、こうしたCBSM手法は国家・地方・コミュニティの各段階に対応した内容で展開すべきであるとしている。同書では、CBSM手法が前述の環境問題の6つの課題について、先進国や開発途上国の各国で展開されている事例が詳細に示されている。

また、最終章(第13章 総括と戦略的提案)では、現代のソーシャルメディアや新しい技術革新がCBSM手法の量的・質的な向上を促進し、環境問題の解決へ大きな役割を果たしていくことが期待されている。

日本でもプラスチックごみや廃棄物処理の問題が、喫緊の政策課題として広く社会的な論議の対象となっている現状を鑑みると、同書における環境保護に対するさまざまな解決手法は今後、わが国の環境問題の解決のための方策を提示してくれるものと思われる。

SDGに触発されたコトラー