杉山)普通の美術館なら入り口から出口まで1本道になっていて、あらかじめキュレーションされた作品を見ていくうちに、ストーリーが分かるようにできている。でもこのミュージアムにはそもそも順路が無い、地図すら存在しない。

ある意味、とても不親切ですが、それはあえて、なんです。道しるべがない代わり、来場者自身の身体を使い、この通路を行った先に何があるんだろうというワクワク感や発見したときの嬉しさが得られる。入る前にそれを理解してもらいたいから、エントランスに「さまよい・探索し・発見する」というコンセプトを掲示してあります。

流れている映像も、あらかじめ決められたものがずっと流れているのではなく、その場ですべてコンピューターが作り出しています。だから、二度と同じ景色は見られない。しかも自分が世界の一部となって、自分の行動で景色を変えられる。世の中とつながっているような気持ちになる。

それが、この空間が生み出した価値なんです。

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変わらない強さ

杉山)オープンまで本当に不安でした。いったい、どのくらいのお客様が来てくれるだろうか、と。それまでに何度も展覧会を企画するなかで、「いける」と思ったものがコケることもあったからです。

オープン初日の朝、平日にも関わらず入場待ちの列が100メートル以上できていました。チケットもあっという間に完売に。夢を見ているようで、本当にうれしかった。

小学校の時から僕を知る友人からよくこう言われます。

「若いころからやりたいことが本当に変わっていない。だから強いよね。」

幸せだと思います。「街」と「アート」と「テクノロジー」という信念や、やりたいんだという気持ちを汚されることなく、今もここにいるから。

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杉山央(すぎやま・おう)

森ビル株式会社 MORI Building DIGITAL ART MUSEUM 企画運営室長。2000年に森ビル株式会社入社。タウンマネジメント事業部、都市開発本部を経て、森アーツセンターでは六本木ヒルズの文化事業を手掛ける。18年6月、東京・お台場に開業した「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless」室長。一般社団法人MEDIA AMBITION TOKYO理事。

取材・文=錦光山雅子 写真=西田香織 編集=川崎絵美

※当記事は「Torus(トーラス)by ABEJA」からの転載記事です。
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