対テロ強硬策への反発か

そうした時期に起きたこの日のウィラント調整相襲撃事件だけに、当初は政治的な動機を取りざたする動きもあった。

しかし警察の捜査で容疑者がISと関連したJADという地元テロ組織メンバーである可能性が濃厚となり、人権問題追及とは別のテロ事件としての側面が強くなってきた。

ウィラント調整相は治安担当調整相として、また元国軍司令官として国内テロ事件の捜査やパプア地方での「独立を問う住民投票実施」などで強い指導力で断固たる対処を訴えてきた。

庶民派として国軍に強力なネットワークを持たないジョコ・ウィドド大統領にとっては「治安維持政策」では頼みの綱がウィラント調整相であり、大統領の信頼を背景にこれまで国軍、警察、諜報機関に一定のにらみを効かせてきたことも事実。

こうした対テロ強硬策にJADなど国内テロ組織は壊滅に近い打撃を被っているとされ、今回の襲撃の背景にはそうしたテロ組織の危機感があったとの見方もでている。

インドネシアにはかつて国際テロ組織「アルカイーダ」の影響を受けた東南アジア地域のテロネットワーク「ジェマ・イスラミア(JI)」があったがその後衰退。そしてJIの分派としてISの影響を受けたJADや「ジェマ・アンシャルット・タヒド(JAT)」、「ネガラ・イスラム・インドネシア(NII)」、「東インドネシア・ムジャヒディン(MIT)」などのテロ組織が活動しているが、2018年5月に第2の都市スラバヤでキリスト教の3教会を狙った爆弾テロ事件以降大きなテロ事件は起きていない。

今回のウィラント調整相襲撃がテロ事件である可能性が極めて高いことから20日に予定される大統領就任式に向けた警戒警備が格段と強化されることは間違いなく、ジョコ・ウィドド大統領の2期目は厳戒態勢の中でのスタートとなりそうだ。

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[動画] ウィラント調整相、刺された瞬間