Maria Cheng

[トロント 18日 ロイター] - カナダのカーニー首相は今週、欧州連合(EU)初の準加盟国となる提案を受けた。米国への依存度を低減させながらもカナダが繁栄できることを示そうとする中、大きな成果といえそうだ。

EUとカナダは今後、この提案が具体的に何を意味するのかを明確にし、一部EU加盟国の反対や、長年にわたり米国と密接な関係を築いてきたカナダ軍当局者のためらいといった課題に立ち向かわなければならない。

この提案のほか、防衛、エネルギー、重要鉱物、AI(人工知能)分野でのさらなる協力に関する確約は、米国との貿易戦争や、トランプ大統領による「カナダを51番目の州にする」などの度重なる脅威が続く中で出てきた。

カーニー氏は17日の欧州議会演説で、「準加盟国」という呼称は用いなかったが、フォンデアライエン欧州委員長の提案を歓迎した。しかし一部のEU加盟国はこれに反対しており、ドイツはカナダとの関係深化を支持しつつも、準加盟国の呼称については再考すべきだとしている。EUの「準加盟国」には前例も法的定義もない。

<「存在しない地位」>

国際貿易弁護士でもあるウィルフリッド・ローリエ大学のバリー・アップルトン非常勤教授は、カナダに対して「存在しない地位が加盟国の支持を得ずに提示された」と指摘。またカナダ憲法では連邦と州政府の間で権限が分かれているため協力関係が機能しない分野もあるとの見方を示した。

同氏はスイスが欧州経済領域(EEA)へのより自由なアクセスを得るために20年以上にわたり交渉を重ねてきたことにも言及した。

一方、トランプ氏は「多くの品目」で欧州との貿易を停止すると脅し、カナダを準加盟国とする提案を「ばかげている」と一蹴した。

サセックス・ストラテジー・グループのシニアバイスプレジデントで、ポール・マーティン元加首相の顧問を務めていたグレッグ・マッケイカーン氏は「予測不可能な米政権と向き合うなか、首相が呼称に深入りせず新たな関係を築いているのは賢明だ」と評価。「カナダに他の選択肢があると明確にすることは、首相が米国と交渉する上で、間違いなく極めて強力な切り札となる」と語った。

カーニー氏は、10月下旬にモントリオールで開催される首脳会議でカナダとEUの当局者が詳細について協議すると述べている。

<「道義的支援」>

カナダ首相府は16日、英国主導の軍事協力の枠組み「合同遠征軍(JEF)」への参加を正式に申請したと発表した。防衛面で米国以外の国・地域との関係を多様化させる狙いがある。

7月には、カナダ海軍向けに最大12隻の潜水艦を建造するため、ドイツのTKMS社を選定したと発表した。

とはいえ、軍の上層部は、欧州も安全保障面で米国に依存していることから、カナダと米国の関係を断ち切ることは事実上不可能だと述べている。

カナダ国防省およびカナダ軍のコメントは得られていない。

カールトン大学のフィリップ・ラガッセ教授(国際関係学)は「カナダは米国と大陸規模の防衛関係にあるため、米軍や米情報機関との関係を断ち切ることは決してできないだろう。それらの資産の大部分は米国が提供しているため、われわれは協力せざるを得ない」と話す。

ラガッセ教授は、カナダは攻撃を受けた場合、地理的な理由から依然として米国からの軍事支援に依存せざるを得ないと指摘。「欧州から艦隊が派遣されることはない。EUからの道義的な支援が、おそらくわれわれが期待できる最大限のものだ」とした。

<双方に不満も>

カナダ政府によると、EUは貿易総額の9%近くを占めている。一方で、カナダの輸出の約70%は米国向けだ。

トロント大学のマーク・マンガー教授(政治経済学・国際関係学)によると、EU当局者は、カナダが通信および乳製品部門の開放を拒否していることに不満を抱いている。カナダは27カ国からなるEUと貿易協定を結んでいるものの、そのうち10カ国はまだこれを批准していないという。

カナダの農業団体は、食肉貿易の大部分を事実上遮断しているEUの規制や、デュラム小麦に影響している保護主義的措置について頻繁に不満を訴えている。一部の農業団体はまた、貿易関係が緊密化すれば、欧州がカナダの農家に自らの農薬規制を押し付ける可能性を懸念している。

マギル大学で米加関係を専門とする研究員のディヤ・ジャン氏は、カーニー氏がEUとの関係を緊密化しようとする取り組みは、米国との不和から生じる圧力の一部を和らげる可能性がある一方で、新たな複雑さを生む可能性もあると分析。「これはカナダがビジネスにオープンであるというメッセージを送るものだが、EUとの新たな関係を交渉する上での実務は困難を極めるだろう。なぜなら、EU側と国内各州の双方からの合意が必要となるためだ」と述べた。

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