David Brunnstrom Joe Cash

[ワシントン/北京 17日 ロイター] - トランプ米大統領は来週、中国の習近平国家主席を首都ワシントンに迎え、今年2回目の首脳会談に臨む。米中関係は貿易や台湾、イラン、さらには人工知能(AI)を巡る世界的な懸念まで、さまざまな問題で圧力にさらされており、両首脳は24日の会談で関係の安定化を模索する見通し。

習氏にとって、ホワイトハウス訪問は10年ぶりとなる。中国は2年連続で1兆ドルの貿易黒字を計上する軌道にある一方、イラン戦争への対応に追われ支持率も低迷するトランプ氏は、物価上昇に不満を募らせる米国民にアピールできる貿易面での成果を求めている。

トランプ氏が5月に北京を訪れて以来となる今回の首脳会談の主な焦点は以下の通り。

◎貿易休戦延長か紛争に逆戻りか

市場が注目するのは、昨年10月に韓国で開かれたトランプ氏と習氏の会談後に発表され、今年11月10日に期限を迎える「貿易休戦」が延長されるかどうかだ。この合意によって、世界最大の2つの経済大国が100%を超える報復関税を双方が課し、世界のサプライチェーンを脅かしていた貿易戦争はいったん休止した。

米通商代表部(USTR)のグリア代表は今月、両国が「農業と非関税障壁について何らかの発表を行う」と述べた。市場関係者は、300億ドル相当の商品を対象とする相互関税引き下げの合意が進展するかにも注目している。中国側にとって最も実行しやすい措置の1つは、米国産農産物への関税を引き下げることだとみられている。

複数の米政府高官からは、昨年の合意を中国が十分に履行していないとして、引き続き対応を求める声が出ているのに対して、中国政府もさらなる関税軽減を要求している。

◎航空機・農産物・先端技術

トランプ氏は11月の米中間選挙を前に、有権者に示せる貿易上の成果を打ち出したい考えだ。具体的には中国によるボーイング 製航空機や米国産農産物の大型購入を確定させることなどが想定されている。

複数の関係者が今月ロイターに明らかにしたところでは、習氏は2015年の訪米時と同様、大規模な企業代表団を同行させる準備を進めている。当時、中国はボーイングの航空機300機を購入する380億ドル規模の契約に調印した。

中国は5月の首脳会談後、ボーイング機をさらに200機購入すると表明。ボーイング側はこれについて、さらに大規模な取引につながる可能性のある「第1弾」に過ぎないとしていた。

また中国はボーイングと長期間にわたって大型契約について交渉を続けている。業界関係者の話では、その内容には「737MAX」500機に加え、数十機のワイドボディー機が含まれる可能性がある。ただトランプ氏が中国への重要なエンジン部品の供給を停止する可能性を示唆してきたこともあって、この取引は長年進展してこなかった。

中国側は数千社の中国企業が米国の先端技術を入手するのを禁止する規則について、その施行を一段と延期するよう米国に働きかけている。これに対し米政府が要望しているのは、自動車や航空宇宙産業などのハイテク分野に加え、防衛産業にも使われるレアアース(希土類)や重要鉱物に関する中国の輸出規制緩和だ。

◎イラン戦争

両首脳はイラン戦争についても協議する見通し。トランプ氏は2月にイスラエルとともに戦争を開始した後、その「出口戦略」に苦戦している。中国はイラン政府と緊密な関係を維持しており、イラン産原油の輸出先として突出して最大の買い手。その点から米政府は、習氏がイランに圧力をかけられる特別な立場にあるとみているが、これまで習氏はそのような姿勢をほとんど示していない。

ロイターは先月、中国が制裁回避の仕組みを通じて数十億ドル相当の商品をイランに販売していると報じた。一方中国外務省は、そのような仕組みについては承知していないとしている。

米国側には不満があるものの、ベセント米財務長官が先月、イランに対する「経済的猛攻」を打ち出し、各国にイランとの取引を縮小するよう警告した際も、中国の銀行に対する制裁には踏み込まなかった。

ベセント氏は今週末に中国の何立峰副首相と会談すると述べている。また今回の首脳会談でも、トランプ氏と習氏が中国とイランの金融面での関係について引き続き協議する見通しだという。

トランプ氏は13日、7月に米兵3人が死亡した攻撃に先立ち、イランが中国の関係先からヨルダンにある基地の衛星画像を入手していたとする報道について、重要視しない姿勢を示した。

◎台湾

中国は長年、台湾問題を巡ってトランプ氏から譲歩を引き出そうとしてきた。米国の法律が義務付けているのは、台湾が自衛するために必要な手段を提供することだ。しかし最大140億ドル規模に上る大型の対台湾武器供与計画については、トランプ氏が北京を訪れて以降、その行方が不透明な状態が続いている。

中国側の働きかけを知る関係者によると、中国政府は今回、台湾の独立に関して米国が従来の「支持しない」という表現ではなく、「反対する」とトランプ氏が公に表明するよう説得したいと考えているもよう。「支持しない」という表現は、長年にわたって米政府が使用してきた立場だ。

米国が台湾政策を変更すれば、極めて大きな論争を招きかねない。台湾防衛に対する米国の意思に疑問が生じ、アジアの同盟国に不安を広げるだけでなく、米議会からも強い反発が出ることが予想される。

◎AIでの協力

専門家の間では、AIが米中協力の可能性を探れる分野の1つになるとの見方がある。AIは国家安全保障や経済競争力、軍事能力にも大きく関わっており、米中両国ともその悪用について一定の懸念を共有しているためだ。ただAIを巡る両国の競争が極めて激しいため、象徴的な合意を超えた実質的な協力が実現する余地は限られるともみられている。

ニュースサイトのアクシオスは16日、ベセント氏の発言として、米国は今週末に行われる中国との協議で、AIがもたらす共通のリスクについて話し合う用意があると報じた。

米議員の間ではAIシステムを規制する新たなルールを求める声が上がっている。一方米AI企業アンソロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)は今月、中国がAI分野で優位に立つことは米国にとって安全保障上のリスクになり得ると警告したが、中国国営メディアはアモデイ氏の主張を「冷戦時代のやり方」に基づくものだとして退けた。

トランプ氏は、AI開発のペースを落とすべきだとの主張に否定的で、懸念を誇張する「非常に否定的な勢力」が存在すると指摘している。

◎フェンタニルの流入

トランプ政権にとっては、中国から米国への合成麻薬フェンタニル原料となる化学物質の流入を抑えることも、引き続き重要課題だ。フェンタニルは米国内で深刻な被害をもたらしている。

米政府はこれまで、中国政府がフェンタニル前駆体の流通を十分に食い止めていないと繰り返し批判してきた。トランプ氏は昨年初め、中国に対してフェンタニル問題を理由とする関税を導入したが、この措置は今年2月に連邦最高裁によって無効とされた。米連邦捜査局(FBI)のパテル長官は先月ロイターに、こうした取引を抑制するため中国側と新たな法執行協力の枠組みを構築したと明らかにした。

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