[17日 ロイター] - 米JPモルガンは17日、米国・イスラエルとイランの戦争が始まって以降で初めて、原油市場について明確な基本シナリオを示すことができないとの見方を明らかにした。アナリストチームがリポートで「最終的に(戦争が)どのような形で収束するのか、単純にモデル化できない」と述べた。
JPモルガンは戦争開始当初、米政権が越えることのない一定の経済的な一線があると想定していた。しかしこれまで6カ月が経過する中でそうした一線の多くが越えられ、明確な出口戦略も見えないとしている。
原油価格は1バレル=100ドルを上回り、米国のガソリン価格は1ガロン=4.37ドルに上昇。軽油価格は冬場の需要期を前に1ガロン=6.31ドルと過去最高を記録する一方、在庫は過去最低の水準に落ち込んでいるとされる。
JPモルガンは、当面の需給などに基づく9月の北海ブレント原油の適正価格を1バレル=約90ドルと推計した。ただ足元の実際の価格は約106ドルで、市場は既に供給が途絶えていると推定される日量1000万バレルに加え、さらなる供給減少のリスクを織り込んでいると分析した。
中東ではバベルマンデブ海峡を通過する船舶への脅威や、サウジアラビアの原油輸出ルートに影響する最近の攻撃など、リスクが高まっていると指摘。ロシアの石油精製施設やウクライナの都市に対する攻撃も続いており、世界のエネルギー供給を巡る地政学的リスクが根強く残っていると説明した。
それでも今のところ原油価格の上昇幅は当初の想定ほど大きくない。JPモルガンによると、政府や消費者が在庫の取り崩しに頼る度合いが想定より小さかったことが背景にある。世界の原油・石油製品在庫は紛争開始以降、約5億5500万バレル減少した。これは同行が年初に予想していた減少量の約3分の1にとどまる。同時に世界の石油需要は前年同期を日量約440万バレル下回って推移しており、供給減少の影響を相殺しているという。
JPモルガンは「在庫の取り崩しよりも需要減少に大幅に依存することで、市場は極めて大規模な供給途絶を、原油価格の持続的な上昇を伴わずに吸収することができた」と解説した上で、戦争開始以降のブレント原油の平均価格は1バレル=94ドルにとどまっていると付け加えた。
JPモルガンによると、中国や欧州、日本、韓国を中心になお相当量の在庫が残っており、供給途絶が長期化した場合の緩衝材になる。このため短期的には原油価格が大幅に上昇する必要性を抑える可能性がある。ただ同行は、中東からの供給途絶が続けば在庫がさらに減少し、市場が需給均衡を維持するため需要減少への依存を強めることから、年内に原油価格が一段と上昇する恐れがあると警告した。