Lewis Krauskopf

[ニューヨーク 2日 ロイター] - 米国株投資家の間で、米国債利回りの上昇が、これまで続いてきた記録的な強気相場の妨げとなることへの警戒感が高まっている。特に問題になりそうなのが、長期金利の指標となる10年国債利回りが急速に5%へ接近した場合だ。

利回り上昇は株式市場にとって複数の逆風となる。債券投資の魅力が高まることで株式との競争が激しくなるほか、株式のバリュエーションに重圧がかかる。借入コストの上昇を通じて、最終的には経済成長自体を抑制する恐れも出てくる。

もっとも現段階で利回り上昇は株価に深刻な打撃を与えていない。10年国債利回りは3月初旬から80ベーシスポイント(bp)強昇し、1日遅くには4.79%に達したが、S&P総合500種は8月13日に付けた過去最高値から約2%下回る水準にとどまっている。

投資家によると、米企業が今年示した力強い利益成長が、利回り上昇を含むさまざまなリスク要因をこれまで覆い隠してきた。ただ好調だった第2・四半期決算シーズンが終了したことで、市場の関心は再びマクロ経済要因へと向かってもおかしくない。

トゥルイスト・アドバイザリー・サービシズのキース・ラーナー最高投資責任者は「決算シーズンが終わり、企業業績という緩衝材がなくなったことで、市場の注目はこうしたマクロ要因へ注がれるだろう」と話す。

<5%の節目を突破するか>

米国債利回りの上昇は、インフレへの懸念や拡大する財政赤字、さらに底堅い経済情勢など複数の要因によってもたらされている。10年国債利回りが1日に一時達した4.79%は、2025年1月以来の高水準だ。米国とイランを巡る新たな軍事的緊張から原油価格が上昇し、世界的な債券売りが加速したほか、米連邦準備理事会(FRB)のウォーシュ議長による講演を受け、近い将来の利上げ観測が強まったことも利回り上昇を後押しした。

ブラックロック・インベストメント・インスティテュートのストラテジストらは8月31日付けノートで「根強いインフレ、高水準の政府借り入れ、そして民間投資需要の増大を考えると、利回り上昇圧力が弱まる理由はほとんど見当たらない」と述べた。

住宅ローンや各種貸出金利の基準となる10年国債利回りが最後に5%に到達したのは23年10月で、株式市場全体が軟調だった時期と重なる。アメリプライズのチーフ市場ストラテジスト、アンソニー・サグリンベネ氏は「5%は心理的な節目であり、トレーダーや投資家がリスクを減らす口実として利用しやすい水準だ」と語る。

エバーメイ・ウェルス・マネジメントのチーフ投資ストラテジスト、ミッチ・シュレジンジャー氏は「5%を超える利回りは歴史的に債券への資金流入を引き付けてきた」とした上で、「資金調達への依存度が高い企業は、この水準付近から借入コスト上昇の影響を強く受け始める」と説明した。

その上で「株式市場が本格的に懸念し始める水準に近づいている」と付け加えた。

<金利上昇に対する弱さ>

利回り上昇は、多くの株式評価モデルにおいて将来利益の現在価値を引き下げる要因となるため、金利が急上昇すると株価は特に影響を受けやすい。

実際、FRBがインフレ抑制のために利上げを進めた22年には、10年国債利回りが低水準から急上昇し、同時に株式市場も大きく下落した。

BNYウェルスのシニア株式アナリスト、ケビン・シェイ氏は「金利上昇は株式の割引率上昇を意味する。将来のキャッシュフロー成長が期待される企業ほど、その成長を維持できることを証明する負担が重くなる」と指摘した。

現在の市場は、人工知能(AI)関連投資による将来利益への期待によって支えられている面が大きい以上、こうした金利上昇リスクに対して一段と敏感になっている可能性がある。

BCAリサーチの株式部門責任者、ノア・ワイスバーガー氏は「市場をけん引しているセクターには大きなデュレーションリスク(金利上昇に対する弱さ)が織り込まれている。債券市場に少しでも変動が生じれば、株式バリュエーションに大きな打撃を与えかねない」と警告する。

<利回り急上昇はPERに打撃>

LSEGデータストリームによると、S&P総合500種の予想利益に基づく株価収益率(PER)は8月31日時点で19.7倍だった。年初の22.2倍に比べれば株式市場の割高感はやや緩和されており、投資家の話では、利回り上昇に加えてAI投資ブームの持続性への懸念なども影響している。一方で株価が相対的に妥当な水準にとどまっているのは、企業業績の好調さがバリュエーションを支えているからだ。

それでも、S&P総合500種のPERは長期平均の16倍を依然として上回っている。投資家の間では、今後さらに利回りが上昇した場合、バリュエーションへの圧力が強まり、少なくともPERのさらなる拡大は難しくなるとの見方が出ている。

エドワード・ジョーンズのシニア・グローバル投資ストラテジスト、アンジェロ・クルカファス氏は「利回り上昇がPER拡大の頭を抑える展開はあり得る」と述べた。

現時点では、利回り上昇は比較的秩序立ったペースで進んでおり、企業や投資家は対応する時間を確保できている。しかしノースウェスタン・ミューチュアル・ウェルス・マネジメントの株式部門チーフポートフォリオマネジャー、マット・スタッキー氏は「金利が急激に上昇し始めれば、市場の予想PERは大きな打撃を受ける恐れがある。より引き締まった金融環境の中で利益成長が持続できるのかどうか、市場参加者は疑問を抱くようになるだろう」とくぎを刺し、金利上昇がバリュエーションだけでなく企業利益の先行きにも影を落とす事態に言及した。

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