Rocky Swift Harry Robertson
[東京/ロンドン 2日 ロイター] - 10年新発国債利回りが30年ぶりの高水準を突破したことで、利回り上昇が資金の国内回帰を促し始め、かつては安定していた世界の債券市場への資金流入の流れが逆転しつつある。3%という基準値は、日本での資金調達コストの面だけでなく、日本を米国債の最大保有国とし、世界の国債市場で最も安定した買い手の一つたらしめてきた資金の流れを反転させるという点でも重要な意味を持つ。
世界的に債券市場の下落が続く中、その動きの一部は、日本の投資家が海外資産から撤退するという賭けに基づいているとトレーダーらは話す。日本が2兆4000億ドルに上る外債をすぐに売却する兆候はまだ見られないが、世界のファンドマネージャーや各種データによると、より着実な削減が進んでいる。
シドニー、ロンドン、シンガポールでは、債券ディーラーや資産運用会社が日本勢による外債の需要減退を察知している。公式データでは日本の投資家は8月22日までに海外債券を3兆円(187億ドル)純売却しており、これは2022年の債券価格暴落以来、年初からの最大の資金流出額となっている。
「日本の投資家と直接話して分かったことだが」と、ラザード・アセット・マネジメントのグローバル債券部門共同責任者であるマイケル・ワイドナー氏は語る。「彼らは恐らく25年間、円建て証券への投資を手控えてきた。それが今、円建て証券の魅力が増し、彼らは資産配分を見直している」
コロナ禍前には日本の投資家が海外勢として最大の債券保有者だったオーストラリアでは、「買い増し」から「現状維持」への変化が感じられている。
シティグループのオーストラリア・ニュージーランド市場セールス責任者であるライアン・エリス氏は、「今年は(日本の投資家は)買い増しよりも、投資残高を維持する傾向を強めている」と語る。「彼らはここ数年で初めて国内市場を重視する姿勢を見せている」とし、「これは完全に収益重視の決定だ」と話す。
<日本投資家は世界の主要プレーヤー>
JPモルガン・アセット・マネジメントが2日に発表した、日本の82の企業年金基金を対象とした調査によると、国内債券の保有を増やす計画の割合は、2008年の調査開始以来最高となった。一方、為替ヘッジコストの高まりを受け、各基金は海外債券の保有を引き続き削減していることも明らかになった。
こうした変化は重要である。なぜなら、日本の投資家は米国債からフランス債、オーストラリア債に至るまで、様々な市場において主要なプレーヤーだからだ。
「日本国債利回りの上昇に伴い、為替ヘッジを考慮した国内債券の相対的な魅力が高まり、海外資産から日本の債券への資金シフトを促す可能性がある」と、みずほ銀行のシニアストラテジスト、中島将行氏はメモの中で述べている。
「日本の国債利回りが上昇するにつれて、米国債など外債の買い手は減少する」と、英資産運用会社セント・ジェームズ・プレースの最高投資責任者であるジャスティン・オヌエクウシ氏は指摘する。「最終的に日本国債と外債の相対的な価値の差は縮小しており、それは非常に重要な意味を持つからだ」
海外ポジションはヘッジされていることが多いため、為替変動の影響はそれほど明確ではない。また、日本の金利がまだ安定していないことも、一部の円資産買いを抑制している要因となっている。パリに拠点を置く資産運用会社カルミニャックの投資委員会メンバーであるケビン・トゼ氏は、今月末に会合を開く日本銀行が「市場の予想よりも速いペースで」利上げを行う必要があるだろうと述べた。
国債利回りの上昇は、高市早苗首相による大規模な財政支出推進も一因となっている。片山さつき財務相は2日、長期金利が3%台に乗ったことについて、適切な財政運営への取り組みを改めて表明し、政府の予算要求額は妥当な水準にあると述べるにとどめた。
日本の大手投資家が何十年もかけて積み上げてきた海外投資がすぐに反転することはないだろう。ただ、主要な借り手がすべて過剰債務を抱え、為替リスクが高まっている世界において、海外で利回りを追い求めるよりも自国投資の方が良い選択肢に見えてきている。
「これは大規模な資金還流ではなく、日本が徐々に外国債券の買い手ではなくなりつつあるという話だ」と、ステート・ストリートのルー氏は言う。「世界最大級の貯蓄プールの一つである日本からの需要が減少することで、世界的に期間プレミアムが上昇している」