Maki Shiraki

[東京 1日 ロイター] - ホンダが2030年までに累計1兆5000億円の原価低減を目指していることが分かった。自社の原価改善活動と合わせ、日系部品メーカー各社にも調達する部品のコスト削減を求めている。中国勢との競争激化に加え、電気自動車(EV)戦略の見直しや米関税、原材料高騰などで悪化した四輪事業の採算を改善し、損益分岐点を引き下げるため、中国メーカーによる部品の活用も含めたサプライチェーン(供給網)の再構築を図る。

関係者が明らかにするとともに、ロイターが関連資料を確認した。ホンダは需要の旺盛なハイブリッド車(HV)の次世代システムのコストを削減する方針はすでに示しているが、部品メーカーを巻き込んだ原価低減の目標額や計画が明らかになるのは初めて。世界で中国車メーカーの存在感が高まる中、日本車メーカーが競争力維持に向けて調達戦略の見直しを急ぐ実態が浮かび上がった。

関係者の話や資料によると、ホンダは今春、四輪事業の主要仕入先を栃木県宇都宮市の会議施設に招集し、サプライチェーン再構築などの方針を説明した。その上で別途、各社ごとに原価低減目標や改善策を提示し、部品コストの圧縮を要請した。

一次仕入先に対しては部材調達方法の見直しや、二次・三次仕入先から調達する部品の汎用品の活用なども求めた。 安全性能に関わる領域などは十分に考慮し、地政学リスクも慎重に踏まえた上で、低価格の中国製部品の採用拡大も打診した。 プレス加工・鍛造部品、電装・機能部品、SDV(ソフトウェア定義型車両)関連部品の3分野で、中国勢と競争できる水準として約30%の原価低減を目標に設定。日系部品メーカーにも協力を仰いだ。

仕入先幹部の1人はロイターに対し、「原価低減の要求額は非常に大きく、達成可能と即答できる水準ではないが、協力できることを議論していきたい」と語った。

別の仕入先幹部は「トヨタ自動車に比べると、ホンダはこれまで積極的には原価低減を要求してこないという印象だったが、今回は一刻の猶予も許されない状況と認識した」と話した。

ホンダ広報はロイターの取材に対し、原価低減の具体的な目標額や取引先との会合の開催実績、内容の詳細については公表していないとする一方、「自社独自で行う原価低減活動と合わせ、取引先との共創活動に基づいた活動を行っている」と説明。「グローバルで開発・生産・購買を含む競争力向上に向けた原価改善活動」を取引先と続けており、「定期・不定期を問わず、取引先に向けた情報発信を行っている」とした。

関係者の1人によると、ホンダは汎用部品について複数のサプライヤーから調達する方針に改め、中国の部品メーカーを一次仕入先として活用することも検討している。走行安全など車両性能への影響が大きい部品や独自技術を要する部品については、従来通り特定のサプライヤーとの共同開発を継続しながら開発効率化を進める。米国では現地調達部品の拡大も視野に入れる。

ホンダ広報は、安全性や品質、供給の安定性を担保するのが前提とした上で、コストと要件をバランスした上で原価低減につながれば「国や地域を問わず競争力のあるサプライヤーを評価」し、最適な調達を目指すとコメントした。

日本車メーカーは、コスト競争力を武器とする中国勢に押され、アジアを中心に販売が低迷している。中国勢が参入しにくい北米市場でも、トランプ米政権の関税政策や労務費上昇が利益を圧迫している。

ホンダの業績は二輪事業の好調や円安に支えられているが、四輪事業はEV関連投資の損失などもあり、収益力の低迷が続く。5月中旬の事業方針説明会では、次世代HVシステムのコストを23年モデル比で30%以上低減すると発表した。

日本勢がけん引してきた自動車産業を取り巻く環境が変わる中、各社ともコスト削減の取り組みを進めている。次世代車の主戦場となるSDVについては、ホンダと日産自動車がSDVの中核を構成する電子制御‌ユニット(ECU)、車載基本ソフト(OS)などを共通化して共同開発することで合意した。協業を通じてコストを削減し、開発効率を高める。

4月に就任したトヨタ自動車の近健太社長は、利益を確保するために最低限必要な販売台数である「損益分岐台数」の引き下げに取り組む方針を示している。

(白木真紀 編集:久保信博)

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