Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto

[東京 2日 ロイター] - 長期金利の上昇は高市早苗首相が掲げる「責任ある積極財政」に転換を迫るのか。政府内の事情に精通する関係者はロイターの取材に、その可能性を否定した。消費減税法案についても、来る臨時国会で審議を粛々と進める構えだ。一方、与党内の一部には金利上昇を理由に財政政策の行く末を懸念する声も出始めた。特に少数与党である参院では、高市財政への風当たりが強まる懸念もくすぶる。

<方向性が変わること「あり得ない」>

「政策への影響が直ちに出てくることはない。足元の経済状況を考えれば3%は普通の数字だ」。政府の財政政策に携わる関係者の一人は2日、ロイターの取材にこう述べた。物価や賃金の上昇に加え、政府が今年度の国債利払いの想定金利を3%程度としている点にも言及。足元の水準は想定内だとした上で、高市氏が進める危機管理投資などの財政拡張的な政策が大きく転換される可能性を重ねて否定した。

政府は消費減税に関する制度設計を明示する「大綱」を15日にも閣議決定する方針だ。自民党内でも税制調査会で議論が進む。同関係者は金利上昇が消費減税法案の行方に与える影響も否定。「長期金利が4%や5%に急伸すれば別だ」と前置きしつつ、「すでに決まった方向性が変わることはあり得ない」とも言い切った。

高市氏自身も政策への影響には否定的だ。1日夜、首相官邸で記者団の取材に応じると、「予算編成を含めた経済財政運営に当たっては、金利などの動向を含め様々な経済状況を評価、分析しながら適時適切に判断していくのは当然のことだ」と述べたものの、7月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に言及。危機管理投資や成長投資を推進することで40年度までの累計で370兆円を超える官民投資を想定していることなどを念頭に「必要な財政需要にも適切に対応し、強い経済と財政の持続可能性の両立をしっかりと実現していく」と改めて強調した。

<「日米関係悪化」懸念する声>

一方、ある経済官庁幹部は「市場の信認を得ることは必須条件だ。だとすれば国債の新発には元々限界がある」と話す。年末まで続く来年度当初予算編成の過程では、歳出改革など予算のメリハリ付けが重要になると説明。政府内では来年度の新規国債の発行額を40兆円程度と想定しているとし、決して野放図に財政を拡張するつもりはないと語った。「市場のことを考えれば、最終的には穏当なところに収まるだろう」とも述べ、政策の中身を固める段階では、金利動向などが加味されるとの認識を示した。

与党内の一部には、財政政策を懸念する見方も出ている。政務三役を務める自民衆院議員は、消費減税については党として方針決定したこともあって転換の可能性は考えにくいとする一方、金利上昇が高市氏の来年度以降の政策に「中期的な影響を及ぼすかもしれない」と述べた。

同じく政務三役経験のある自民参院議員はベセント米財務長官がこの間、日本の金融政策に絡む発言を繰り返している点を念頭に、「米は日本発の金融危機を心配している」と指摘。高市氏が推し進める投資に米の理解が得られるかがポイントだとし、「舵取りを誤れば日米関係の悪化につながる恐れすらある」と語った。

さらに、与党が過半数割れの状態となっている参院では、臨時国会での消費減税法案の審議で紛糾する可能性も消えない。政府関係者は「消費減税は数の力で押し切る訳にはいかない。野党に理解を得られるよう丁寧に説明する必要がある」とも話している。

<「年内3.25%」の見方も>

高市氏は今月中旬以降、内閣改造や党役員人事に取り組む構えだ。市場の注目を集める片山さつき財務相は続投が有力視される。そうなれば人事による「負のサプライズ」は回避されることになる一方で、米国の長期金利が上昇基調にある中、日本の金利上昇圧力は当面続くとみられる。

専門家からは、一定の押し目買いが入るものの力強さを欠くとして、「金利低下方向の材料は今のところ特に見当たらず、上昇がここで止まるとはみていない。長期金利は年内に3.25%への上昇がありそうだ」(三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジスト)との見方が出ている。

訪米中の片山氏は日本時間の2日、長期金利の上昇について記者団から問われ、「特定の水準にコメントは当然していないし、金利自体が様々な要因を背景に市場で決まるものだ」と説明。その上で、一般論として長期金利は先行きの経済、物価情勢や金融財政政策に対する市場の見方や、海外の金利動向などを判断材料として動くものだと述べた。

足元の市場の動きからは、中東情勢に起因するインフレ圧力の高まりやAI(人工知能)関連投資の資金調達が続いていることなどが見て取れるとし、「様々な要因で長期金利が動いている可能性がある。経済への影響は要因次第でなかなか(判断が)難しい作業だと思う」と述べた。「金利動向についてはしっかり見ていきたいと思っている」とも付け加えた。

(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)

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