<10月に問われる「民主主義国家」の進路。分断の先にある国家の岐路について>
イスラエルは10月27日、国会に当たる「クネセト」の総選挙を迎える。次の首相が誰になるかだけではなく、建国以来、国家の重要な価値観としてきた「民主主義」との向き合い方が問われる。
それ故、「いかなる基準で見てもイスラエル史上極めて重大な意味を持つ総選挙」と英王立国際問題研究所(チャタムハウス)が今年7月の論考で指摘したように、その行方と影響をイスラエル国民だけでなく、世界中のユダヤ人社会も注視している。
クネセトとは、古代エルサレムに招集された賢者や長老ら120人による「大集会」に由来する。1948年の建国以来、人口が大きく増えても、この120議席という定数を変えることはなかった。
イスラエルでは単独政党が過半数の61議席を獲得することは難しく、複数政党による連立政権を基本としてきた。しかし、極右との連立によって2022年末に発足した第6次ネタニヤフ政権は「完全なる右派政権」と評され、議会多数派を握る右派が重視する政策を数の論理で推し進めてきた。
最も象徴的だったのが、政権発足から1カ月もたたずして打ち出された、最高裁判所など司法権限の抑制を目的とした「司法制度改革案」だ。
反対派は「クーデター」と批判したが、政府は「司法が左派に牛耳られている」として改革を主張。各地で大規模な抗議デモが続き、司法の独立を重視するリベラル・世俗派と、政治力を強めようとする右派・宗教派との亀裂が鮮明になった。