このコンペティションの日本大会が始まったのは2022年、コロナ禍の行動制限が緩和されつつあった時期だ。フロール・デ・カーニャから打診を受けたアイデイ商事は、閉塞感が強かったバー業界を盛り上げる一助になればと日本大会の開催を決めた。バーを1軒1軒訪ねて回る地道な周知活動の中で出会ったのは、営業自粛や休業により仕入れた食材を廃棄せざるを得ない状況に直面し、フードロスの問題を強く意識するようになったバーテンダーたちだった。日本に古くから根付く「もったいない」の精神が、カクテルの世界で再醸成され始めていたのである。

「サステナブル=特別な取り組み」ではないことを広めたい

同チャレンジは、日本のカクテルを世界に示す舞台にもなっている。2023年には安里勇哉氏(Bar Prima)が初めて世界大会に進出。2024年には、大島創氏(Gold Bar at EDITION)が世界4位と、頂点まであと一歩に迫った。ゼロウェイストや地産地消、伝統技術の継承といった、「この一杯で社会にどんな価値を届けるか」を競う舞台で、日本のバーテンダーの技術と発想は世界へ届き始めている。

2026年は9月9日に日本大会の決勝戦が開かれ、日本チャンピオンは11月にインドで開催されるアジア大会に挑む。世界大会は2027年3月、ニカラグアで行われる予定だ。

植樹活動
フロール・デ・カーニャによる植樹活動。フロール・デ・カーニャは、森林再生を目指す国際NPO「One Tree Planted」と提携し、各地で植樹イベントを開催している

アイデイ商事の活動は大会運営にとどまらない。歴代日本チャンピオンが登壇するセミナーや、過去の優勝カクテルを提供するイベントなども展開している。同社が目指すのは、「サステナブル=特別な取り組み」という意識を解きほぐし、日々のバー営業の中で、自然に実践される文化として定着させることだ。

2005年、ノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイ氏は、日本語の「もったいない」を世界共通語「MOTTAINAI」として発信した。その土壌を持つこの国のバーで、今、サステナビリティを日常に楽しむ文化が育ち始めている。カウンター越しに差し出される一杯が、今日と未来を静かにつないでいく。

◇ ◇ ◇

アンケート

どの企業も試行錯誤しながら、サステナビリティの取り組みをより良いものに発展させようとしています。今回の記事で取り上げた事例について、感想などありましたら下記よりお寄せください。

アンケートはこちら