海の底には、まだ人間がほとんど見ていない場所がある。光も届かず、音も遠いその深海で、研究者たちは奇妙なものを見つけた。
ただの岩の連なりにも見えるそれは、なんと「クジラの墓場」だったのだ。
【動画】インド洋の水深4500メートルより深い場所で発見された、深海の「巨大生物の墓場」
クジラは、死んだあとも海に影響を残す。クジラの死骸が海底へ沈む「ホエールフォール」は、深海の生物にとって長期間にわたる栄養源となる。しかし、深海の大型遺骸は見つかる機会が少なく、化石記録も断片的になりやすい。
ところが2023年、中国科学院深海科学与工程研究所が主導する研究チームは、インド洋南東部のディアマンティナ帯で、世界最大級とされる「クジラの墓場」を確認した。
2026年6月に科学誌『ネイチャー』に掲載された研究によると、水深4616〜7001メートルに及ぶ深海で、海底に沿って約1200キロにわたり、5つの比較的新しいクジラ遺骸群と、476点の化石化した鯨類の痕跡が記録された。論文によると、「クジラの墓場」で発見された最古の化石は526万年前にまで遡るという。
AP通信は、死骸周辺でクラゲ、チューブワーム、クモヒトデ、ナマコ、コシオリエビ、二枚貝などが確認され、多くが未記載種である可能性があると報じた。メリーランド州のカルバート海洋博物館の古生物学者スティーブン・ゴッドフリーはAP通信に対し「発見されるであろうサンプル数は驚異的だ」と語っている。
今後、なぜこの場所に多数の鯨類遺骸が集まったのか。そして、遺骸を利用する深海生物がどのように分布しているのか。これらをさらに検証していくことになるだろう。
論文は、V字状の海底地形が沈降する死骸を集めた可能性に加え、きわめて低い堆積速度、骨の高い密度、鉄マンガン酸化物による被覆などが化石の保存に関わった可能性を指摘している。
クジラの墓場を研究することの意義について、研究チームの一員でもあるイタリアのピサ大学の古生物学者であるジョバンニ・ビアヌッチはAP通信に対し、「光や酸素も少なく、水圧も極めて高い。生命がそのような極限状態にどのように適応できるのかを理解する上で重要だ」と語った。
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