どんなに頑張っても、NATO事務総長のマルク・ルッテはトランプ米大統領の「親友」にはなれそうにない。
「トランプの扱いがうまい」と評判のルッテは、米大統領の機嫌を取ることに腐心してきた。
「強い男」と持ち上げ、イラン攻撃を「断固たる行動」と褒め、ゴルフ談義を持ちかけた。昨年6月のNATO首脳会議でトランプがイスラエルとイランの交戦を小学生のけんかに例えたときは、「パパ(トランプ)」が叱ってやらなければと冗談を飛ばした。
お世辞作戦はしばらくうまくいっていた。1月には「トランプのかんしゃくをなだめられるのは誰か」と問われたフィンランドのストゥブ大統領が、笑って「ルッテ」と即答した。
その魔法が解けつつある。
トランプ政権は5月、欧州への軍事関与を大幅に縮小すると発表。ヘグセス米国防長官はイラン戦争で米軍機の基地使用を認めなかった加盟国を、公然と非難した。
ルッテは6月24日、ワシントンに飛んだ。共同記者会見でトランプが「(イランとの)軍事衝突でNATOはあまり協力的でなかった」と不満を漏らすと、懸命に取り入った。
「自由世界の指導者」とトランプをたたえ、加盟国が軍事力を増強できたのは彼のおかげだと述べた。「トランプ効果」「トランプ・トリリオン(1兆ドル)」と題したパネルを披露し、第2次トランプ政権の発足以来、NATOがいかに防衛費を増額したかを具体的に説明した。
だがもともと2人は水と油だ。ルッテは独身で質素な生活を好み、ピアノを弾く。オランダ首相時代も自転車で通勤し、高校で社会科を教えていた。要はトランプが嫌う「多国間主義を重んじる官僚的なエリート」なのだ。
総合格闘技ファンのトランプが好むのは、分かりやすい勝者。そしてトランプの世界で、勝者は自転車ではなくゴルフカートに乗っている。
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