[東京/北京/シドニー/台北 6日 ロイター] - 中国軍は6日、原子力潜水艦から太平洋に向けてミサイルの発射実験を実施した。国営メディアが報じた。日本、オーストラリア、ニュージーランド(NZ)は批判や懸念を表明した。
新華社通信によると、人民解放軍海軍の原子力潜水艦が午後0時01分(0401GMT、日本時間午後1時01分)、模擬弾頭を搭載したミサイルを太平洋の公海に向けて発射した。ミサイルは「所定の海域」に着弾したとしているが、場所の詳細については明らかにしていない。
新華社は今回の発射について、中国軍の年次訓練の「通常の一環」だと説明し、特定の国や標的に向けたものではないと強調した。
新華社はミサイルの種類を明らかにしていない。ただ、国営の環球時報は軍事専門家の話として、昨年の軍事パレードで初めて公開された最新の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨浪3(JL-3)」の可能性が高いと報じた。米国防総省の報告書によると、同ミサイルは中国沿岸海域から米本土に到達可能だという。
ロシア大統領府(クレムリン)は、6日から中国・青島沖の海域および空域で始まった中国との合同海軍演習は、他国を標的としたものではなく、地域の安全保障を強化するものだと説明。ロシアのシンコ少将は6日の演習開会式で、今回の演習は防衛的な性質のものだと強調した上で、ロシアと中国間の海軍協力を新たな段階に引き上げるものになると述べた。
ロシアのペスコフ大統領報道官は、演習がアジア太平洋地域の政府から否定的な反応を引き起こす可能性があるかとの質問に対し、「われわれの合同演習は、いかなる相手も、また地域のいかなる特定の国も標的としたものではないという点を念頭に置くべきだ」と指摘。「それどころか、こうした重要な分野におけるロシアと中国の協力は、地域の予測可能性と安全保障に貢献する非常に重要な要素だ」との見解を示した。
<台湾、中国の「威嚇」を非難>
台湾総統府は、中国が大陸間弾道ミサイルの試験発射によって国際社会を威嚇しようとしていると非難。台湾の安全保障当局高官は6日、軍事演習のピーク期に、中国海軍の動きが「増加傾向」にあることを台湾は注視しており、これにはロシアとの共同訓練も含まれると述べた。
台湾の対中政策を統括する大陸委員会は「中国軍は潜水艦発射型の大陸間弾道ミサイルを発射することで、意図的に軍事力を誇示し、周辺地域の緊張を高め、地域の平和と安定を損なった」とする声明を発表した。
オーストラリアのウォン外相は、中国が事前に豪政府に実験計画を通知していたと明らかにした上で、今回の発射は地域を「不安定化させるものだ」と指摘。
訪問先のフィジーでの記者会見で「試験は中国による急速な軍備増強の中で行われたものであり、地域が求める透明性や意図に関する安心感を欠いている」と述べた。
オーストラリアとフィジーは実験の数時間前、いずれか一方が攻撃を受けた場合に他方が支援に当たることを双方に義務付ける防衛同盟に署名した。
中国と、米国やオーストラリアが主導する西側諸国は、戦略的な要衝である太平洋の島しょ国を巡って長年影響力を競い合っており、中国は南太平洋全域で経済・安全保障面での影響力拡大を図ってきた。
ロンドンに拠点を置く国際戦略研究所(IISS)の中国安全保障・防衛政策担当上級研究員、メイア・ヌウェンズ氏は「中国がオーストラリアとフィジーの合意に対する不満を表明しようとしている可能性がある」とした上で、「ただ、今回の発射は逆効果となり、南太平洋諸国における中国のイメージを悪化させる恐れがある」と指摘した。
NZに拠点を置く船舶追跡会社スターボード・マリタイム・インテリジェンスのアナリスト、マーク・ダグラス氏は、今回の実験ははるか以前から計画されていたとし、中国からの通知のタイミングが、オーストラリアとフィジーが「オーシャン・オブ・ピース同盟」に署名した後だった点について「控えめに言っても興味深い」と指摘した。
防衛同盟について問われた中国外務省の毛寧報道官は、関係各国が島しょ国の独立と自主性を尊重し、第三者の利益を標的にしたり損なったりする行為を控えるよう望むと述べた。
NZのピーターズ外相は、今回の実験を深く懸念していると表明。
声明で「わが国がこの種の活動について長年にわたって懸念を表明してきたにもかかわらず、中国はわれわれへの通知から数時間以内に実験を実施したようだ」とし「NZはこれを歓迎できない、懸念すべき事態と受け止める」と語った。
日本政府は6日、中国から弾道ミサイルを発射するとの説明を同日午前に受けたと発表した。発表によると、海上保安庁が5日、中国当局から「宇宙ごみ落下に伴う区域の設定を行う」との通知を受領。区域の一部に日本の排他的経済水域(EEZ)が含まれていた。6日になって中国国防省から北京の日本大使館に対し、弾道ミサイルを発射するとの説明があったという。
防衛省によると、ミサイルが日本の上空を通過したり、EEZ内に飛来したりすることはなかった。
木原稔官房長官は6日午後の記者会見で、日本および地域の安全保障の観点から今回のミサイル発射に懸念を有しており、引き続き警戒・監視活動に万全を期すとともに、関連の動静を注視していくと語った。
こうした域内からの批判に対して、中国の毛報道官は、今回の発射は「終始、安全かつ標準化された専門的なやり方で実施された」と説明。北京での記者会見で「関係国が本件を過度に解釈しないよう望む」と述べた。