海上封鎖を再開すると脅すことくらいしかない

その結果、今のところイランはいつもの顧客、つまり中国に輸出する石油の量が増えているにすぎない。いまアメリカとイランの関係で浮上している問題のかなりの部分は、両国が6月17日に調印した覚書でアメリカが多くのことを約束した半面、イランが約束した内容が非常に少ないことによる。

この覚書でイランは、制裁の緩和と凍結資産の解除を勝ち取り、( 将来的に)ホルムズ海峡を管理することを認められ、(最終合意が署名された場合に)3000億ドル規模の復興資金を受け取れることになった。

その一方、それと引き換えに、実質的に何も約束していないのだ。

「私に言わせれば、覚書の文面は(『了解文書』というよりも)『誤解文書』になっている」と、対イラン強硬路線を主張する保守系シンクタンク「民主主義防衛財団」(ワシントン)のミアド・マレキ上級
研究員は言う。


「イラン政府は、交渉を通じて問題を解決したいとは全く思っていない。自国に対するプレッシャーを和らげるために交渉に臨むだけだ」

7月1日まで2日間、カタールの首都ドーハで行われた両国の間接協議は、そのとおりのパターンになった。アメリカ側は、本題である核問題について話し合いを本格化させるつもりでいたが、イラン政府の強い意向により、調印済みの覚書の内容をめぐる議論にほぼ終始した。

イラン側は、より本格的な協議に入る前に、アメリカが覚書に明記された条件を履行すべきだと主張している。

トランプ米大統領は戦闘再開の可能性を口にしているが、それを本気だと考える人はほとんどいない。軍事行動はおおむね、ガソリン価格を上昇させる結果しか生まなかった。

しかも、アメリカの中間選挙は11月に迫っている。トランプ政権は覚書の調印にこぎ着けるために、交渉カードをことごとく手放してしまった。

「アメリカに残された手だては、海上封鎖を再開すると脅すことくらいしかない」と、マレキは指摘する。

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