建築やアール・ヌーヴォーに魅せられたルシャントゥールにとって、ホテル・アトラクションを題材に選んだのは自然な成り行きだったという。

「私は写真とグラフィックデザインの経験があり、何よりも建築とアール・ヌーヴォーには昔から魅了されてきた。AIを使い始めるずっと前から、何年にもわたって建物を撮影し、その物語を探求していた」

現在の作品は「代替現実」や想像上の世界に照準を絞り、「忘れられた未来、あり得ない建築、パラレルヒストリー」を探求することもある。「ホテル・アトラクションはその世界に属していた」

「失われた」タワーの再現を思い立った理由は「建築史上、最も偉大な『もしそうなっていたら』の一つ」だからだという。

「私は30年にわたって実在する建物を撮影してきた。これは、実在しなかった建物を写真にするチャンスを与えてくれた」「AIのおかげで全く新しいものを発明できたのではなく、世界がもう少しで手にしていたはずだった信じられる記憶を再現でき、まるでずっと前からそこにあったように、タワーに光や天候、存在感を持たせることができた」

ルシャントゥールはホテル・アトラクションについて、「硬さのない垂直性」が、20世紀初頭に台頭した建築トレンドとは一線を画していると指摘する。

「高層ビルが幾何学性、効率性、反復性の象徴となりつつあった時代に、ガウディは放物線や懸垂曲線を基盤とする、まるで生きているかのようなタワーを構想した」

その設計は、ずっと後の時代に普及する「有機的な形態、流線的な構造、純粋な機能性よりも空間の情緒性」といったコンセプトを先取りしていた。

もしもホテル・アトラクションが建設されていたら、ニューヨークの超高層ビル設計は流れが変わっていたかもしれないとルシャントゥールは言う。

「ニューヨークは直角の聖堂になった」「ホテル・アトラクションは、曲線を描きながら呼吸するように垂直に伸びるという、違った表現をもたらしていたはずだ」とルシャントゥールは想像する。ほかの建築家たちがガウディにならっていたかどうかは分からない。それでもこの建物は「間違いなく20世紀の建築表現に一石を投じていただろう」。

ルシャントゥールにとって、ホテル・アトラクションの尽きることのない魅力は、実現しなかった可能性を物語っている点にある。

「それは過去への郷愁ではなく、想像の中に閉じ込められていた未来への郷愁だ」「AIを通じて私はその忘れられた未来を、束の間でも再び目に見えるものにしたかった。歴史を書き換えることによってではなく、私たちが集団で記憶している光景が違うものになっていたことを、人々に想像してもらうことによって」

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 歴史で読み解く アメリカ建国250年
2026年7月7日号(6月30日発売)は「歴史で読み解く アメリカ建国250年」特集。

超大国の現在地と「トランプ後」の世界

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます