Pete Schroeder
[ワシントン 23日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は24日の米東部時間午後4時(日本時間25日午前5時)、毎年実施している大手銀行向けのストレステスト(健全性審査)の結果を公表する。
ストレステストでは深刻な景気後退が発生したとの想定の下、大手銀の財務体質がどの程度耐えられるかを検証する。テストの内容は毎年見直される。
通常はテストの結果が注目の的となる。銀行がどれだけ自己資本を積み増す必要があるか、また自社株買いや配当として株主にどれだけ資金を還元できるかを左右するためだ。しかし今回は、トランプ政権下で進められている銀行資本規制の大幅な見直しの最中に実施されるため、結果が各行の自己資本水準に直接影響することはない。それでも米銀行システム全体の健全性を測る重要な材料となる。
今回のストレステストのポイントを整理する。
<ストレステストを行う理由>
FRBは2007―09年の世界金融危機を教訓として、大手銀が将来同じようなショックに耐えられるかを確認するためにストレステストを導入。正式な開始は11年だが、当初は多くの大手金融機関が苦戦。シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックスなどは資本計画の修正を迫られ、ドイツ銀行の米子会社は15年、16年、18年に不合格となった。
その後、銀行側がテストへの対応に習熟したことに加え、FRBも審査手法の透明性を高めたことで状況は変化した。20年には従来の「合格・不合格(パス・フェイル)」方式が廃止され、銀行ごとのリスクに応じた資本規制へ移行したことで、波乱はあまり起きなくなった。
<評価の仕組み>
ストレステストでは、仮想的な景気後退局面でも銀行の自己資本比率が4.5%の最低基準を上回るかどうかが検証される。自己資本比率は保有資産に対する資本の割合を示す指標であり、銀行の健全性を測る重要な尺度で、成績が良好な銀行は通常この基準を大幅に上回る。
さらに国際的に業務展開する米巨大銀には少なくとも1%の「G─SIBサーチャージ(システム上重要な金融機関向け追加資本)」も課される。またストレステストの結果は、危機時の損失を吸収する「ストレス資本バッファー(SCB)」の大きさも決定する。SCBは20年に導入された追加的な資本規制で、最低自己資本比率の4.5%に上乗せされ、想定される損失が大きい銀行ほど、より厚い資本クッションを積む必要がある。
今回テストの対象となるのは32行。想定シナリオには、深刻な世界的景気後退、商業用不動産市場の大幅な悪化、住宅用不動産市場のストレスの高まりが盛り込まれている。またトレーディング業務の比重が大きい銀行は、世界的な市場ショック、最大取引先の突発的なデフォルト(債務不履行) にも耐えられるかが検証される。
<今年の結果が特別な理由>
FRBは2月、26年のストレステスト結果に基づく資本バッファー変更を見送ると発表した。つまり今回の結果は各銀行の財務体質を示す参考情報にはなるものの、資本配分や株主還元政策に直接的には影響しない。市場関係者にとっては、各行の健全性を把握する手がかりにはなるが、例年ほど大きな資本配分の変更には結び付かない見通しだ。
<自己資本比率を変更しない理由>
FRBはストレステスト制度そのものの見直しを進めている。銀行業界は長年にわたり、審査プロセスが不透明、FRBの裁量が大き過ぎる、実施コストが過大などと、制度への不満を訴えてきた。
FRBはこれまでも、「合格・不合格」方式の廃止、定性的評価項目の削除、SCB制度の導入などを通じて制度を改革してきた。しかし業界側はなお不満を抱き、24年には制度改善を求めてFRBを提訴した。FRBが現在検討している改革案では、従来は非公開だった審査モデルやシナリオについて、銀行側が事前に内容を確認して意見を提出できるようになる。
銀行業界にとっては大きな前進と受け止められているが、一方で批判派からは「審査の厳格性や機動性が損なわれる恐れがある」との声も出ている。
制度改革を主導するボウマンFRB副議長(金融監督担当)は、今回は自己資本比率基準を据え置くことで、規制当局は市場からの意見を取り入れつつ、「制度上の不備を是正できる」と説明している。