cGASは、感染症や細胞の損傷によって細胞内の異常な場所にDNAが検出された際、体内の炎症反応を引き起こす役割を担う。長寿家系に見られた変異は、この炎症反応を完全に遮断することなく、適度に抑制していると考えられている。
プッターによれば、長寿家系の人々は活動可能なcGAS遺伝子を1つしか持っていない可能性が高く、それによって体内の余計な炎症が抑えられていたと考えられる。「それでいて、感染症の撃退や細胞修復を行う最低限の機能は維持されているため、これが健康寿命を延ばし、生存を可能にする保護メカニズムにつながっている」
この絶妙なバランスが重要だ。研究チームは、cGASの働きを完全にブロックすると感染症やがんのリスクが高まり、逆に活性化しすぎると慢性炎症を招く可能性があると指摘している。
次のステップは、自然界での寿命が3〜9カ月と短い脊椎動物「キリフィッシュ」(メダカの仲間)を使い、この遺伝子変異が実際に寿命を延ばすのか、また各組織にどのような健康効果をもたらすのかを検証することだ。
欧州ヒト遺伝学会の議長を務めるアレクサンドル・レイモン(本研究には関与していない)は、「今回の知見により長寿に結びつく要因をピンポイントで観察できるようになり、何よりもすべての人の健康寿命を延ばす鍵を示している可能性がある」と期待を寄せる。
老いるのが遅い家系の理由をシンプルに説明することはできないが、今回の研究は、遺伝によって受け継がれる希少な変化が「なぜ一部の人々が長生きし、かつ健康を維持できるのか」という謎を解き明かす手がかりになることを示している。
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