Miho Uranaka Sam Nussey
[東京 23日 ロイター] - 24日に控えるKADOKAWAの株主総会では、夏野剛社長ら取締役の再任議案の行方に市場の関心が集まっている。大株主である香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントが夏野社長の退任を求める株主提案を行う中、市場関係者の間では取締役再任は綱渡り状態との見方も出る。一方、仮に会社提案が可決された場合でも、賛成率が低くとどまれば緊張関係が続く可能性があり、総会後の経営のかじ取りも注目されている。
機関投資家に強い影響力を持つ米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、今総会で夏野氏の取締役再任に反対票を投じるよう推奨するとともに、KADOKAWA株を約14%保有する筆頭株主でアクティビスト(物言う株主)のオアシスが提案した同氏の解任議案への賛成を推奨した。
ISSは株主向けのリポートで、「夏野氏の在任期間中、KADOKAWAの収益性は悪化した」と主張。漫画、アニメ、ゲーム分野で大きな存在感を持つKADOKAWAだが、自己資本利益率(ROE)は、2022年3月期の9.4%から25年3月期には0.5%まで低下した。
ISSは「夏野氏の交代が最善の前進策」とコメント。オアシスによると、米議決権行使助言会社のグラスルイスも同様に、夏野氏の社長退任を求める株主提案に「賛成」を推奨している。オアシスは、KADOKAWAの業績悪化や執行力の欠如、ガバナンス(企業統治)の脆弱さなどに関し、株主総会で同社経営陣の説明責任を追及するよう呼びかけている。
これに対してKADOKAWAは、夏野氏を解任すれば、ROE改善を含む改革が頓挫し、経営の安定性を損なう恐れがあるとしている。同社は5月に、2032年3月期を最終年度とする新たな中期経営計画を公表し、売上高4000億円(うち海外売上高1000億円)、営業利益380億円の達成を目標として掲げた。
<ギリギリの戦い>
昨年の株主総会では夏野氏の再任に90%超の賛成票が集まったが、市場関係者の中では、今回は会社側にとって「かなりギリギリの戦いになる」との見方が出ている。約30%を保有するとされる機関投資家にとって、ROEの水準以外にも判断材料になる可能性のある事項が存在するからだ。ある関係者は「オアシスの株主提案があるかどうかに関係なく、機関投資家は反対票を入れやすい状況」と話す。
今月だけでも、KADOKAWAはフリーランスとの取引を巡って公正取引委員会から勧告を受けたほか、東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で有罪判決(執行猶予付き)を受けて控訴中の角川歴彦元会長が、夏野社長らを相手取り、防御権侵害や名誉毀損を理由に損害賠償を求める訴訟を起こした。
市場関係者の間では、仮に取締役の再任案が可決されたとしても、賛成率が低くとどまれば株主との緊張関係が解消されないとの見方もある。市場関係者の一人は「賛成率が50%台にとどまれば、オアシスなどの株主による追加株式の取得や新たな株主提案を通じた働きかけが続く可能性がある」とみる。
会社側も安定株主の確保など追加対応を迫られる可能性があり、大株主でKADOKAWA株約10%を保有するソニーグループやカカオなど戦略的な株主の動向を注視する声も出ている。
<今年は「選解任案」が増加>
三菱UFJ信託銀行によると、3月期決算企業の今年の株主総会は、機関投資家による株主提案が6月9日時点で139件に上り、過去最多となった。取締役の選解任を求める議案の割合が前年比で増加している。
同社の法人コンサルティング部で株主戦略グループを率いる下田紘郎氏は解任提案について、「外部第三者からは事業戦略がうまくいっていないように見える」場合や「不祥事やガバナンス不全」などが背景になるケースが多いと説明。一方、選任提案は社外取締役の送り込みが中心で、「株価を上げるような経営ができないのであれば、非公開化を考えるべきではないか」という議論を取締役会で促す狙いがあるとの見方を示した。
こうした動きについて、大和総研の吉川英徳主任コンサルタントは、企業側が資本効率の改善や株主還元策を一定程度進めてきたことを背景に、アクティビストは増配や自社株買いといった資本政策よりも、取締役会の構成や経営体制の見直しなど経営改革そのものを求める姿勢を強めていると説明する。企業側が事前に票読みを行い、必要に応じて提案者と調整するケースも増えているという。
KADOKAWA以外の選解任案では、オアシスが京セラに対して、山口悟郎会長の解任を含む株主提案を提出。英投資ファンドのアセット・バリュー・インベスターズはロート製薬とワコムに対して、社長や会長の解任などを含む株主提案を行っている。