Parisa Hafezi Angus McDowall
[ドバイ 20日 ロイター] - 米国とイランが戦闘終結と制裁解除に向けた協議を続けているが、そこには深刻なパラドックスが潜んでいる。イランを合意遵守へと促すための交渉材料が、米国や西側同盟国がテロ組織と見なすイランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊(IRGC)」を強化してしまう可能性があるのだ。
IRGCは長年にわたり、制裁の陰で勢力を拡大し、石油や建設から海運、通信、港湾に至るまで、広大なビジネス帝国を築き上げてきた。
イランの高官らは、同国と米国が対イラン制裁解除、石油輸出再開、および外国投資を認める内容で合意した場合、IRGCがこれらの経済的利益の大部分を獲得する有利な立場にあると指摘した。
一方で、IRGCが果たす中心的な役割は合意に向けた多くの障害の一つとなる可能性もある。IRGCがイランのビジネスに深く関与している以上、同部隊が「テロ組織」に指定されていることは、経済を制裁から解放させる動きを著しく複雑化させる恐れがあるからだ。
イランの初代最高指導者ホメイニ師によって創設されたIRGCは、後継者のハメネイ師の下で勢力を拡大し、中東全域への影響力拡大や国内の反体制勢力の弾圧を主導する中で政治的権力を獲得した。
米国・イスラエルが2月28日にイランを攻撃してハメネイ師を殺害し、戦闘が始まって以来、IRGCは国内での権力をさらに拡大し、ハメネイ師の息子モジタバ師を新たな最高指導者に据える一助となった。同部隊は、戦闘終結に向けた合意への支持を表明している。
イランの高官筋は、IRGCを「戦争の真の勝者」と評し、イランのイスラム体制の存続を確保した同組織は、過去数十年にわたりイランの制裁回避作戦の大部分を主導してきたことから、制裁解除による恩恵を最も享受できる立場にあると述べた。
IRGCの広報担当者はコメントを控えた。
先に発表された暫定合意により、制裁対象となっているイランの石油販売が認められることになる。また、今後締結されるより包括的な合意により、その他の全ての制裁が解除され、イランは3000億ドルの復興基金を利用できるようになる可能性がある。
IRGCは財務データを公表していないが、経済再生に向けたいかなる取り組みも、IRGCの財務的影響力をさらに拡大することになると高官らは指摘する。
公式声明や公開記録によると、IRGCのエンジニアリング部門「ハタム・アル・アンビア」は、主要なインフラおよびエネルギープロジェクトで事業を展開する数百の関連会社を統括しており、通信、自動車製造、観光、物流の分野にも関与している。
ホワイトハウスはコメント要請に回答していない。
イランの投資法では、外国企業は国内企業と提携することが義務付けられている。IRGC関連の企業は多数あるため、イラン市場に復帰する欧米企業は、たとえ直接関与していなくても、IRGCと関連する事業体と並行して、あるいはそれらを通じて事業を行うことになりかねず、IRGC関連の継続的な制裁規定に抵触するリスクを負うことになる。
元米財務省制裁調査官のジェレミー・パナー氏は「IRGCは石油部門の裏で糸を引いている存在であるため、彼らと取引を行うことによる法的リスクを全て無視することはできない」と指摘する。
米国との間で包括的な合意が成立せず、制裁が継続された場合でも、IRGCは暫定的な石油輸出免除の恩恵を受け続け、制裁回避の経験を活かして経済に対する強固な支配を維持できるだろう、とイランの高官らはみている。
2000年代初頭からイランの核開発計画を巡り制裁が課されたことを受け、IRGCは仲介業者やダミー企業を通じて石油輸出、海運、貿易を円滑にするネットワークを構築し、経済的な支配を加速させた。
だが、第一次トランプ政権がイランが核開発を制限する見返りに経済制裁を解除する核合意から18年に一方的に離脱し、対イランで「最大限の圧力」キャンペーンを展開し、加えて現在の第二次政権で制裁をさらに拡大したことで、IRGCがこのビジネスモデルを維持することは困難になった。