4. 要警戒かつ低レベルという逆説
解体されつつある米国の認知戦は、しかし脅威でなくなったわけではない。むしろ、米国を干渉の主体として扱う見方が、外部の分析に少しずつ現れ始めている。
前述の仮創研のデータセットで、米国以外の機関が発表した報告書のうち、米国を干渉の主体(攻撃する側)として扱ったものの割合を年ごとに見ると、2024年の1.7%から、2025年は6.2%、2026年は5.3%へと、少数ながら増加に転じている。
該当する報告は各年1〜3件と小さな数であり、この数値だけで趨勢を断ずることはできない。ただし、変化の質には着目すべきものがある。2022年に「米国発の干渉」とされたのは、反ワクチン団体やQAnon(米国発の陰謀論運動)、極右インフルエンサーといった国内の非国家主体が中心だった。
これに対し、第2次トランプ政権の発足後に現れたラ・ティルデは、国家そのものが干渉の主体となった事例である。ラ・ティルデ自体はまだこのデータセットに収録されておらず、数量上の変化はこれから表れる段階にある。だが、干渉の主体が非国家から国家へと移りつつある兆しが見てとれる。
見てきたように、米国の認知戦は、攻めが稚拙で、守りは自壊している。
それでも要警戒なのは、第一に、米国という大国そのものが直接の干渉主体になりつつあるからだ。
第二に、その稚拙さゆえに工作が暴露され、相手の攻撃材料となって、対象地域に「米国は偽情報の発信源だ」という不信を広がることで民主主義の衰退をよりはっきりと世界に知らしめることになる。
第三に、ラ・ティルデが、カリブ海での麻薬密輸船への空爆など、現に進行中の致死的な軍事作戦と同じ作戦圏で連動しているからだ。主体である米国が強大な軍事力を持つ大国であるがゆえに、低レベルであることと、危険であることは、両立する。