相互確証「脆弱性」による抑止とは
一方で、「交渉が失敗すれば、紛争拡大を防ぐ歯止めが失われた状態で再び戦闘が激化し、各国がさらに強硬な対応に踏み切る可能性が高い」と警告した。
「今この局面を動かしているのは信頼ではなく恐怖だ。すべての当事者が、軍事力は相手に大きな損害を与えることはできても、問題そのものを解決することはできないと理解している」
テヘランの中東戦略研究センター(CMESS)のマスード・レザエイ上級客員フェローは、今回の戦争によって米国とイランの関係を規定する新たな抑止論が生まれたとみている。
「現在浮上しているのは、従来の相互確証破壊(MAD)とは異なる『相互確証脆弱性』とも呼ぶべき事態だ」と、レザエイは本誌に語った。
その背景には、イランが米軍の中東拠点に対してミサイルやドローン攻撃を実施し、さらに米国とイスラエルの高度な防空・監視体制にもかかわらず、イスラエル軍施設への攻撃を繰り返し成功させたとの認識があるという。
レザエイは、その結果としてワシントンは体制転換や国家の分断を目指す戦略から、交渉と政治的合意を重視する方向へ軸足を移したとの見方を示した。
一方で、イランとイスラム革命防衛隊(IRGC)にとって抑止力の回復は依然として重要な課題だとも指摘する。革命防衛隊が得意とする非対称戦は、圧倒的な軍事力を持つ敵との対決が激化した場合には限界があるためだ。
「イスラム共和国の政治指導層は、断続的な低強度の衝突を伴う不安定な平和は、根本的にイランに不利だと考えている」とレザエイは語った。
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