Tamiyuki Kihara
[東京 9日 ロイター] - 消費減税に外為特会、防衛費増額に財政投融資━━高市早苗政権が注力する政策を巡り、財源案が次々と浮上している。いずれも債務残高の拡大を回避するもので、裏を返せば財政運営が綱渡りの様相にあることを示している。政府内には補正予算を「封印」することで、一般会計当初予算を積み増して対応する案もある。しかし、イラン情勢や物価動向次第では追加の経済対策が必要となる可能性があり、すでに長期金利が上昇する中、特例公債(赤字国債)への安易な依存は市場の信任低下を招きかねない。
<消費減税に外為特会活用案>
高市氏は2月の衆院選で掲げた公約にこだわってきた。「責任ある積極財政」を旗印に、成長投資と危機管理投資に財源を割き、強い国内経済に導きたい考えが根底にある。複数の政府関係者によると、投資の財源には償還の見通しをあらかじめ定める「つなぎ国債」を充てる方向で調整が進んでいる。関係者の1人は「投資については『つなぎ国債』を使うことで一応は財源面の決着はついている」と話す。
同じく看板政策だった食料品の消費税ゼロは、現在も政府内で検討が進む。税率ゼロ%なら年5兆円台、1%なら年4兆円台が必要になるとされ、早ければ6月中にも税率を含めた方針が示される見通しだ。
財源に浮上しているのが、外国為替特別会計(外為特会)の剰余金を充てる案だ。2026年度当初予算には約3兆1000億円が繰り入れられた。事情を知る政府関係者は「消費減税の財源の一部に外為特会を使うことになるだろう」と語る。
<防衛費増額に財投活用案>
防衛費を積み増すための財源も焦点となっている。政府与党内では不安定化する国際情勢を念頭に、「必要な装備や体制を構築し直さなければならない」との声が大勢だ。必要となる財政規模は年末に向けた議論となるが、数兆円単位の積み増しとなるのは必至とみられている。
そこで政府与党内で浮上しているのが、財政投融資の活用だ。本来は公共事業など長期のプロジェクトに使われるものだが、これを防衛関連の施設整備などに充てるという。防衛政策に精通する自民党衆院議員は「十分な財源を確保するためにも、財政投融資をどこまで財源として活用できるかが勝負だ」と話し、すでに検討を進めていることを明らかにした。
財政投融資の原資となる財投債は、対象事業の収益などで償還されるため、国の債務残高とは別枠で管理される。高市氏が引き下げを明言する「債務残高対GDP(国内総生産)比」にも影響しにくい。ただ、そもそも防衛関連経費に国債を充てることへの反発は一部野党を中心に根強く、国会などで議論を呼ぶ可能性もある。
<脱補正予算で事態打開なるか>
もっとも、政府与党が期待するこれらの財源が利用可能なのかを疑問視する声もある。外為特会について、前出とは別の政府関係者は「すでに現行の防衛費増額などの財源に充てられている。消費減税にまで回すのは難しいのではないか」と指摘。財政投融資を防衛費に充てる案についても、米トランプ政権との間で合意した総額88兆円(1ドル=160円)規模の対米投融資を引き合いに、「しばらくは対米投資のために多額の財投債を使うことになる。使途を大きく広げられる状況ではない」と話す。
同関係者が「解の一つ」とするのが、補正予算の当初予算への一本化だ。高市氏は予算の複数年度化とともに、必要な予算は補正ではなく当初予算に盛り込む方針を掲げている。ここ数年、毎年10兆円以上の規模で編成されてきた補正を「封印」すれば、単純計算で同規模の財源が確保できるとの考え方だ。同関係者は「予算はトータルで考えるべきだ。全体額がいくらで、国債発行額はいくらになるのかをマーケットは見ている」と説明。年末の来年度予算編成作業に向け、議論していくことになるとの考えを示した。
ただ、イラン情勢に伴う物価高は深刻さを増している。当初は補正編成に後ろ向きだった高市氏も、総額3兆1135億円の追加歳出を余儀なくされた。情勢次第では、再び予備費の積み増しや経済対策を求める声が高まる可能性もある。
財政政策に精通する政府関係者は「各省庁とも高市氏が求めることを何とか実現しようとしているが、総じて財政の議論が後回しになっている」と警鐘を鳴らす。「このままでは早晩、行き詰まるだろう」
(鬼原民幸 編集:久保信博)