2026年1月、米軍特殊部隊デルタフォースがベネズエラの首都カラカスに突入し、マドゥロ大統領を拘束した。電撃的に見えたこの作戦は、実際には何カ月も前から周到に練られていたものだ。

CIAは少人数のチームを現地に潜入させ、マドゥロの日課や移動パターンを把握していたという。その情報源は、衛星でもドローンだけでもない。決定的だったのは、マドゥロの側近に近い人々、つまり「人」だった。

こうした構図は、ベネズエラに限らない。イランをめぐるアメリカとイスラエルの作戦も、現地の内部協力者の存在を前提としなければ説明がつかない。国家が国運を賭ける作戦ですら、最終的には人間から得られる情報に依拠しているのである。

そしてその協力者をリクルートする場合、不満、対立、忠誠心、恐怖といった感情が重要なトリガーになる。人は必ずしも金で動くわけではない。インテリジェンスの世界で「ヒューミント(人的情報)」が依然として中核にあり続けるのは、このためだ。

この構造は、企業のリスク管理にもそのまま当てはまる。たとえば、不正の兆候は内部関係者のちょっとした不満や人間関係の亀裂から表面化することがある。極端な例では、上司への不満をきっかけに不正の証拠が外部に持ち出されるケースすら存在する。重大なリスク情報はデータベースではなく「人の中」に眠っている。

「だが、それはAIの時代には古い発想ではないか」という声もあるだろう。確かにAIの進化によって、企業活動における情報収集と意思決定は劇的に効率化した。公開情報の整理、競合分析、海外動向の概観把握といった領域では、もはやAIは不可欠な存在になっている。

しかし、企業のセキュリティリスク対策という観点に立つと、むしろ「AIでは手に入らない情報」の価値が相対的に高まっている。

必要なのは「当事者に寄り添うだけ」の応答ではない
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