Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto

[東京 2日 ロイター] - 高市政権が掲げる消費減税の議論が政府・与党内で活発になっている。複数の関係者によると、食料品の税率をゼロ%とする当初案に加え、準備期間が短いとされる税率1%案が並行して検討されており、6月中にも方向性が定まる見通しだ。税率や実施時期は高市早苗首相が最終的に判断するが、いずれにしても財政的、政治的な課題が待ち構えている。

<「公約違反と言われかねない」>

「なるべく各党が合意できるようにできればと思う」。自民党の小野寺五典・税制調査会長は2日、給付付き税額控除に関する党内会合後、消費減税について記者団にこう述べた。超党派の「社会保障国民会議」では、給付と減税をどう組み合わせて制度化するかの議論が進む。消費減税は同制度を実施するまでの「つなぎ」との位置づけだ。

この消費減税をめぐり、政府・与党内では意見が交錯する。複数の政府関係者によると、高市氏は2月の衆院選で掲げた食料品に限ったゼロ%への引き下げを目指す姿勢を崩していない。一方、消費減税を2027年4月から実施しようと思えば、レジシステムの改修などに割ける時間は限られる。そこで政府・与党内からは食料品の税率をゼロ%ではなく1%とする案が浮上している。

消費税を前提に構築された現在のシステムでは、税率の変更は比較的容易であってもゼロ%への設定変更には大幅な改修が必要だとされる。「国民会議」のヒアリングでは、改修事業者が「ゼロにするには1年程度の改修期間が必要だ」と指摘。政府関係者も「税率変更なら数カ月でできるが、ゼロ%にするには相当の時間がかかる」と話す。

「国民会議」は3日にも会合を開き、消費減税について各党の意見をすり合わせる予定。給付付き税額控除の制度設計と合わせ、6月中には高市氏が方向性を決定する見通しだ。政務三役経験のある自民参院議員は、「税率1%ということになれば、公約違反だと言われかねない。そこを首相がどう考えるかだ」と語った。

消費減税の政府方針について、木原稔官房長官は2日午後の記者会見で「現段階で方向性がなんら決まったものではない」とした上で、「食料品の消費税率ゼロの財源については今後、特例公債に頼らないことを前提に財源のあり方を検討し結論を得ていく」と述べた。

<「消費増税を議論する必要が」>

ゼロ%でも1%でも課題は残る。一つは財源だ。複数の政府関係者によると、現在は特例公債(赤字国債)に頼らない方向で財源確保の検討が進む。ゼロ%で5兆円規模、1%でも4兆円規模が必要になるが、歳出の見直しや税収上振れなどで「かき集める」構えだ。関係者の1人は「詳細な積み上げはこれからだが、2年分の10兆円規模なら何とか国債以外で確保できるだろう」との見通しを語った。

ただ、いずれにしても恒久財源とは言いがたい。同関係者も「あくまで2年間の措置だ」と強調。官邸幹部は国会で審議することになる消費減税法案には、2年間限定の措置である点が明記されるとの考えを示した上で、「(減税の)出口の問題はクリアできるはずだ」と述べた。

一方、政治的な課題は解消されない。政権の方針通り27年4月から消費減税が実施された場合、28年末までには再び減税の継続か否かの判断を迫られることになる。国民や野党から減税継続を求める声が高まる可能性もある。時を同じくしてやってくるのが参院選だ。

複数の政府・与党関係者は、28年夏の参院選で減税継続の可否が争点化する可能性に触れ、「野党が継続を主張すれば、与党としても同様の訴えをせざるを得ないだろう」と話す。たとえ時限的な減税措置であったとしても、税率を戻すことは国民にとって実質的な増税と受け止められるからだ。

財務省で政務三役の経験がある自民議員は、食料品について税率を戻すことは困難だとの認識を示した上で、こう述べた。「高級品など食料品以外の品目について、消費増税を議論する必要が出てくるかもしれない」

<「ゼロ%でも1%でも経済効果に大差なし」>

SMBC日興証券シニアエコノミストの宮前耕也氏は、食料品の消費減税による経済効果について、税率ゼロの場合は総合CPI(消費者物価指数)の伸びが1.5ポイント程度、1%の場合は同1.3ポイント程度の押し下げ効果が期待できると試算する。

その上で、「ゼロ%でも1%でも経済効果に大きな差はない」と指摘。レジシステムの改修などに長期間を要するとされている点を念頭に、「高市首相にとってはゼロ%という公約実現を優先するか、スピード感を重視して1%で収めるかの判断になる」と述べた。

財源については、ゼロ%で年間5.3兆円、1%で同4.6兆円が必要になると試算。「赤字国債発行に頼らなければ基本的には財政の持続可能性への不安は生じない。2年間で10兆円程度であれば、厳しいが何とか確保できるのではないか」と語った。

一方で、「結局は使えそうなお金を当て込んでしまうことになる」とも指摘。「財政余力が乏しくなる中、仮に減税を延長するにしても、それに代わる措置に移行するにしても、2年後に再び財源問題を解決しなければならない」と危惧した。

また、中東情勢の悪化に伴い物価高騰が長引く一方、企業側の価格転嫁が十分に進んでいない現状にも言及。消費減税が実現したとしても、企業側がそのタイミングで価格転嫁を進めれば、試算通りにCPIが押し下げられるとは限らないとも分析した。

(鬼原民幸、竹本能文 取材協力:杉山健太郎 編集:橋本浩)

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。