Anirban Sen

[ニューヨーク 15日 ロイター] - 最有力予測市場プラットフォームのカルシとポリマーケットでは今年、不審な取引が急増している。これは投資家に広がる予測取引の人気を浮き彫りにする一方で、監視の目が厳しくなるプラットフォーム側に課題を突き付けている。

こうした疑わしい取引の急増は予測市場の取引高が膨らんできた時期と重なっており、議会の批判を受けて、プラットフォーム運営各社もインサイダー取引の取り締まりに向けた対策を強化しているところだ。

事情に詳しい2人の関係者の話では、今年初め以来カルシは400件を超える不審な取引を把握した。この数字はカルシが昨年1年間に調査した件数の2倍余りに当たる。関係者の1人は、取引の詳細な特定は避けたものの、一部事案がデリバティブ規制を担当する米商品先物取引委員会(CFTC)に通報されたと付け加えた。CFTCはコメント要請に回答していない。

3人目の関係者は、同じくポリマーケットでも、今年初めから疑わしいと見なされた取引の数量が大幅に増加していると明かした。

ただ予測市場プラットフォームで悪質な取引当事者を特定するのは難しい場合がある。

元米証券取引委員会(SEC)委員でスタンフォード大学法科大学院教授を務めるジョセフ・グランドフェスト氏は「企業のインサイダー取引の世界では、法に抵触して取引を行う可能性のある、重要な未公開情報にアクセスできる当事者を特定するのは比較的簡単なことが多い。しかし一部の予測市場に関して、それと同等のデータを収集することはしばしば非常に困難、あるいは不可能だ」と指摘した。

不審な取引が増えている背景には、設立から10年も経たない両プラットフォームでの取引急増がある。カルシは5月上旬、過去6カ月間の年換算取引高が3倍強に増加して総額1780億ドルに達したと発表した。デューン・アナリティクスのデータによると、ポリマーケットのオフショア取引所と米国プラットフォームを合わせた4月の月間名目取引高は約103億ドルと、前年同月の38億ドルを大幅に上回っている。

同時に取引プラットフォーム側も、連邦職員が自身で関与する政治活動に基づいた取引を行うことを禁止する最近の動きを含め、違法行為の防止措置や安全策を追加した。

予測市場の規制を巡っては現在、デリバティブ市場として規制すべきだと主張するCFTCと、各州との間での管轄権争いの焦点となっている。

それでも不審な取引の急増は、特定のイベントの結果に対する賭けに成功すれば高額な報酬が得られる点から、投資家が利益を得るためにリスクを冒すことをためらわない姿勢を示している、と専門家は指摘する。

予測市場プラットフォームへの関心の高まりは、運営企業の評価額を押し上げる一因にもなっている。カルシが最近完了した10億ドルの資金調達ラウンドにおける企業価値は220億ドルと評価され、1年足らずで10倍を超えた。今年初めのローンチ遅延を経て米国取引所の展開を急いでいるポリマーケットも、150億ドルの評価額で新たな資金調達の交渉を行っているもようだ。

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予測市場は経済政策の発表や選挙などのイベントに関連する結果を探る指標として浮上し、その正確性が伝統的な世論調査をしのぐことも多いため、投資家は売買の重要な判断を下す前にこれらのプラットフォームを利用するようになっている。

これらのプラットフォームでは、経済政策から選挙、スポーツに至るまで幅広いイベントの結果に紐付いた二択(「はい」か「いいえ」か)の契約をユーザーが売買する。

HECモントリオール経営大学院のバンサン・グレゴワール教授は「経済的に見てこうした予測市場の性質は、ニュースに対する市場の反応ではなく、ニュースそのものを取引することを可能にするためリスクが少ない」と説明する。

カルシは2018年、マサチューセッツ工科大学(MIT)の同級生だったタレク・マンスール氏とルアナ・ロペス・ララ氏によって設立された。20年の新型コロナウイルス禍の最中にシェーン・コプラン氏によって立ち上げられたポリマーケットは、クラウドソースによる予測実験として始まり、ここ数年で本格的なイベント契約取引所へと成長。毎月数十億ドル規模の取引を生み出している。

だが最近の注目を集めるインサイダー取引事件が、予測市場プラットフォームへの監視を強める要因となった。例えば、ある米陸軍兵士がベネズエラのマドゥロ大統領の排除に関する機密情報を用いポリマーケットで賭けを行い、40万ドルを手にしたとして起訴された。4月にはカルシが「政治的インサイダー取引」を理由に3人の米連邦議会候補者を利用禁止処分とした。

CFTCのセリグ委員長は最近、インサイダー取引を積極的に訴追する方針を表明。またCFTCは3月に予測市場の規制を策定するプロセスを開始している。

議会からの厳しい目に対応する形でカルシとポリマーケットは最近、機密情報や違法な情報提供を用いた賭けなど、特定の種類の賭けをそれぞれのプラットフォームで禁止することを強調するために規則を更新した。ポリマーケットは、社会の批判を受けて一部の戦争関連の賭けや契約も削除した。

トロント大学経営大学院のチャールズ・マルティノー教授は「インサイダー情報を持っている人物がいれば、株式市場よりも予測市場でそれを利用しようとする傾向がはるかに強いかもしれない」と警告している。

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